星 彩|週末作家

週末作家。カードゲーム「ショートショートnote」を使って、ショートショートを書いてい…

星 彩|週末作家

週末作家。カードゲーム「ショートショートnote」を使って、ショートショートを書いています。時々エッセイ、読書や映画の感想文も。最近は月に1,2更新くらい。 京都芸術大学大学院 芸術研究科(通信教育) 修士課程 文芸領域 在籍中。

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  • ショートエッセイ

    エッセイをまとめています。 ショートエッセイ、映画や読書の感想文など。

  • #毎週ショートショートnote

    これまでの物語の中で、たらはかにさんの「毎週ショートショートnote」企画への参加したものをまとめています。410文字の文字制限付き。

  • スキを集めた物語ベスト10

    これまでの物語の中で、読者のみなさまに特にスキを集めたショートショートをセレクトしています。【月毎更新】

  • お気に入りの物語ベスト10

    これまでの物語の中で、スキの数に関係なく作者自身が気に入っているショートショートをセレクトしています。【きまぐれ更新】

  • ChatGPTと戯れる

    ChatGPTとの会話の記録。

最近の記事

  • 固定された記事

noteの海のサーフィンの途中、この離れ孤島に辿り着いた方は、まずはこちらからどうぞ。この島の地図です。 スキベスト10マガジンはこちら▼ https://note.com/hoshiaya_ss/m/m00f6b9e23acb 星 彩のプロフィールはこちら▼ https://note.com/hoshiaya_ss/n/n46f52131db16

    • 2年かけてバイオリンの教科書を一冊やり遂げた話|ショートエッセイ

      唐突だが、私は音楽が苦手だった。 むしろ、嫌いだったと言ってもいい。 小さい頃は親戚の集まりでカラオケで歌ったりもしていた。ホームビデオには幼稚園児の私が、自分で作詞作曲した歌を歌っている姿も残っている。 いつの頃からだろうか。 私は人前で歌わなくなった。歌があまり得意でないと自覚したせいだった。 中学校の頃は合唱コンでも、口パクでやり過ごしていた。高校生の時には友人からのカラオケの誘いをすべて断った。大学生ではオールカラオケについて行っても、部屋の隅で寝るか、紅白歌合戦

      • ツノがある東館|ショートショート

        私たちを部屋に案内する女将の頭には、どう見てもツノが生えていた。それも、鬼のように髪の毛に隠れてしまうタイプではなく、牡鹿並みの立派なツノ。 さっきから女将は天井が低い箇所を通るたびに、「頭上ご注意ください」と小声で注意を促し、自分は完璧な角度に体を曲げて通過しているが、こちらにはそんなツノはないので、屈むことなく廊下を歩いている。 私たちは女四人で風光明媚な温泉宿に来た。タクシーを降りて、受付で予約の確認をしたところまでは、良かった。 「本日のご宿泊は別館の東館でございま

        • 今年のTopics「社会人学生になった」|ショートエッセイ

          気がつけば、年末。 仕事は無事に納まり、年末年始休暇です。しかし、無事に納まっていないものが。その敵は、大学院の課題です。 私は今年の4月から、京都芸術大学大学院 文芸コース(通信課程)の1期生として、小説創作を学んでいます。私が所属するのは、主としてエンタメ小説を書く方が集まるゼミ。通信制大学らしく、全国からさまざまなバックグラウンドをお持ちのゼミ生たちが、二十数人で切磋琢磨しながら創作活動に励んでいます。 社会人学生ってどんな感じ?と思われる方のために、授業のイメージ

        • 固定された記事

        noteの海のサーフィンの途中、この離れ孤島に辿り着いた方は、まずはこちらからどうぞ。この島の地図です。 スキベスト10マガジンはこちら▼ https://note.com/hoshiaya_ss/m/m00f6b9e23acb 星 彩のプロフィールはこちら▼ https://note.com/hoshiaya_ss/n/n46f52131db16

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        記事

          宇宙人と話すときに恥をかかないために|読書感想文

          この宇宙に住んでいるなら、全宇宙の共通教養は身につけておいた方がいい。いつか来る、太陽系外の宇宙人と話をするときに、恥をかかないために。 そう思う人は、この本を読んだ方がいい。 その本とは、ブルーバックスの『宇宙人と出会う前に読む本 全宇宙で共通の教養を身につけよう』である。 本の冒頭、太陽系外にある宇宙ステーションのカフェで、見ず知らずの宇宙人にうっかり話しかけられるところから始まる。 「あなたはどこから来たのですか?」 ここで、「地球」と答えると思ったあなたは、スジが

          宇宙人と話すときに恥をかかないために|読書感想文

          déjà vu|読書感想文

          出会い 私があと1冊小説を借りようと棚を物色していた時、図書館には閉館10分前を知らせる「蛍の光」が流れていた。 タイトルが目に留まり、その本を手にした。 『夏の名残りの薔薇』恩田陸 時間もないし、これでいいやと、その本と残り数冊の本を手にカウンターへ向かった。 déjà vu 家に帰って、ゆっくり本を開いてみると、中扉にある文字を見て、衝撃を受けた。 あぁ、だから私はこの本を手に取ったのか、とさえ思った。 アラン・ロブ=グリエ 私は学生時代、フランス文学専攻

          déjà vu|読書感想文

          旅に出たくらいで、人生は変わらない|映画感想文

          私が大好きなケイト・ブランシェットの出演作、『バーナデット ママは行方不明』をオンライン試写で観る機会をいただいたので、一足先に感想を。 あらすじ 人生がうまくいかないバーナデット バーナデットは創造者でもあり、破壊者でもある。 若い頃に天才建築家として名を馳せ、かつてクリエイティブに人生を捧げてきたが、今ではご近所のママ友から疎まれる厄介者だ。 度重なる隣人とのトラブルはだんだんエスカレートし、最後はどうにも押しつぶされそうになるバーナデット。追い詰められ、逃げるあ

          旅に出たくらいで、人生は変わらない|映画感想文

          告白水平線|ショートショート

          「ねぇ、恋って水に溶けると思う?」 僕の質問は、ラムネのビー玉が沈む音にかき消された。瓶から泡が吹き出す。 「わぁー、すごい!」 彼女は滝のように流れる白い泡を見て、手を叩いて喜んだ。海の家のおじさんは、瓶を手早く拭いてから渡してくれた。さっきまで氷水に浸かっていた瓶の冷たさが心地よい。 「さっき何か言った?」 彼女は砂浜を歩きながら訊いた。 僕は慌てて口の中のラムネを飲み込む。喉に炭酸の刺激が広がった。 「えっとね、ラムネって恋の味がすると思わない?」 「何? CMのセ

          告白水平線|ショートショート

          半笑いのポッキーゲーム|ショートショート

          「見て、これ」 目の前にスマホの画面が突きつけられる。 「近い、近い」 2匹の犬がジャーキーの両端をくわえて食べている動画だった。 「ウチの犬。ウケない?」 高瀬は左手でスマホを掲げながら、右手でポテチの袋をまさぐった。 俺と高瀬はあみだくじで負けた学級委員で、時々放課後の教室で「仕事」をさせられた。俺たちは「仕事」終わりに「打ち上げ」と称して、カバンに忍ばせたお菓子を食べながら二人で他愛もない話をした。今日のお菓子は高瀬の担当だった。 「なんだよ、これ」 「新しい芸」

          半笑いのポッキーゲーム|ショートショート

          背後にご注意|ショートエッセイ

          通勤電車を降りる。ここは朝夕以外には無人駅になるような小さな駅である。普段は同じ駅で降りる人はまばらだが、この日は降車する人がたくさん目についた。 改札に向かう人々の黒いカラスのようなスーツ姿を見て、あぁ、新入社員だ、と思い当たった。その前の週に、 新入社員たちとは一度だけ挨拶を交わしていた。研修会場に顔を出しただけの先輩社員の私に、新人たちは一様に緊張した面持ちで、礼をした。研修を担当する人事部の社員が二名、 その傍らに立っていた。大切な羊を守る牧羊

          背後にご注意|ショートエッセイ

          異国への旅|ショートショート

          アリスは、よく遠くの国へ旅に出た。 遺跡を訪れ、古い文化を学ぶことを楽しみにしていた。 歴史上、最も古い文化の発祥の地と言われているその国へは、初めての旅だった。 アリスは、カラフルな布がはためくマーケットを抜け、ある遺跡にたどり着いた。そこで、古い像に出会った。見たことのない装飾品を身につけた人間のような形をした像だった。遺跡を見物する人だかりから遠く離れた場所にひっそりと、その像は佇んでいた。その表情は笑っているようでも、怒っているようでもあった。 ふと、彼女は、その

          異国への旅|ショートショート

          デジタル混入島|ショートショート

          「あ、ここも鳥いました!」 バードウォッチャーが目を凝らしているのは、大自然ではなくモニターの画面だ。最近、鳥の混入事件が相次いでいる。活字の「鳥」だ。 本来は「島」であるはずのところに「鳥」が侵入してしまうのだ。 事件が認知され始めたのは、島田晃敏内閣総理大臣が就任してすぐの頃だった。大手の新聞に誤字が相次ぎ、各社原因究明に奔走した。 ほどなくして、新聞だけでなく教科書、雑誌、個人のSNSに至るまで、多くの活字で「鳥」の混入が続々と発見された。 鳥混入を阻止する校正部隊

          デジタル混入島|ショートショート

          アナログ巌流島|ショートショート

          「右手に見えるのが巌流島です」 僕は座っていた椅子から半ば身を乗り出すようにして、体を捻る。島だ。船が十分に島に近づくと、島の上の方に【上陸する】というアイコンが見えた。ゴーグルのツマミを操作してクリックする。 ロード中にゴーグルを外して水を飲む。 再び装着すると、目の前には海が広がっていた。 ツアーガイドの声に従い、巌流島を見て歩いた。こんなに狭い自分の部屋からどんなところへでもバーチャル旅行ができるのだから便利だ。 ふと島の上空にアイコンが見えた。【アナログ巌流島】

          アナログ巌流島|ショートショート

          伝書鳩パーティー|ショートショート

          クックルー。鳩がひとつの民家の屋根に集まっている。みんな足にはカラフルな環。伝書鳩である。 「あなたはどこから?」 「私は南の方から。もう2日ほど飛んでいます」 「あら、長旅ご苦労様」 鳩たちの井戸端会議。あ、井戸端じゃなくて屋根上か。 とそこへ、新たな鳩がバサバサと降り立つ。足環はなし。野鳥だ。 「よう、お前さんたち旨い木の実の場所を知ってるんだが、来ないか?」 「私たちはすぐ飛び立つのでお構いなく」 「まあ、そう言わずに。ついて来な」 民家の屋根から鳩が一斉に飛び立

          伝書鳩パーティー|ショートショート

          心お弁当|ショートショート

          その日は、雨が降っていた。 夜も遅く、コンビニ弁当でもと思ったところに、見慣れないお弁当屋さんの灯りが見えた。 傘の雫をバサバサと落とし、お店に入る。大人が3人も入ればぎゅうぎゅうになるような小さなお店だった。 「いらっしゃいませ。今日はどんな御気分で?」 並べられた黒い箱のお弁当を覗き込んで驚いた。 「雨でぐしょ濡れ嫌な気分」 「残業終わってほっとした気分」 「恵みの雨で嬉しい気分」 「ナイターの結果にワクワク気分」 無機質なプラスチックの蓋に覆われていて、肝心の中身は

          心お弁当|ショートショート

          休んだ日の大事件|ショートエッセイ

          子どもの頃、体が弱かった。 体が弱かった、と書くとなんだか高尚な感じがするが、ただ単に風邪をひきやすい子どもだった。 学校を休むこともしばしばで、2、3日休んで、治りかけの頃に昼間のテレビを眺める背徳感が好きだった。当時は、マイケル・ジャクソンのゴシップなニュースをお昼のワイドショーが流していた。 学校を休んだ時に、いつも気がかりなことがあった。 幸いにも学校の勉強が遅れることの不安は特になく、食いしん坊でもなかったので給食も特に気にならなかった。私の分のゼリーを巡ってじ

          休んだ日の大事件|ショートエッセイ