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男児は如何にして採集から学ぶか

男児、昆虫を採集すべし

何かを収集するのが趣味という人は多い。人に限らず生き物全般に言えることかもしれないが、何かを収集することは生物の本能なのだろう。
アリとキリギリスの物語のように、食べ物が豊富にある時こそ必死に働いて備蓄し、来たる冬を飢餓することなく生き抜く、リスクヘッジの教訓を最初に教えてくれる物語だ。
生き抜くために必要なもの、今はあるが未来になくなってしまうかもしれないものを巧みに収集できる生物がこの世界で生き残ることができるのだ。人間もそうだ。例えばお金。未来のために稼ぎ、守り、運用できる者が生き残ることができる。
偉大な成功者になるためには幼い頃からその技術を学ばなければならない。
だからこそ、男児たる者、昆虫を採集するのだ。

遺伝子に組み込まれた必然

収集スキルがある者が人生を制す。
ただ集めればいいということではない。自分にとって本当に必要であるもの、心躍るもの、幸福になれるものを収集するのだ。
自分にとって本当に必要なものが何なのかわからないまま大人になり、いらないものばかりを収集して、いざ晩年に振り返ってみたら何も残ってなかったなんて悲惨な最後を送りたくないだろう。
ブランド品や高級車が本当に必要なものなのか、自分が持っている限られたお金の中で、優先して収集しなければならないものを履き違えていないか、童心に帰り学び直す必要がある大人たちも多いだろう。
そのような過ちを犯さないためにも、幼少時代に遊びながら正しい収集スキルを学ばなければならないのだ。
その格好の舞台が昆虫採集だ。
まず、なぜ男児は昆虫採集が好きなのだろうか。おそらく何百万年も前から変わっていないのではないだろうか。人間がまだ狩猟採集民族だった頃からそれは変わらず、狩りを学ぶための練習を昆虫採集で行えるよう遺伝子に組み込まれているのではないかと考える。どれだけ人間が進化し、文明が発達しようとも、男児が昆虫採集を好きであるなら、そこから学ぶべき必要があるということなのだろう。女児が昆虫採集に興味を示さず、おままごとで家事や育児の練習をするように、これは遺伝子に組み込まれた必然といっていい。
昆虫を採集せずに狩りは学べず、狩りを学べずにして生き残ることはできない。

書を捨てよ外に出よう

まず男児たる者家の中に引きこもっていてはろくな大人にならない。大自然の脅威や街の喧騒を五感で感じとることで感受性が身につく。昆虫や動物に興味を持ったのなら、どんどん外に連れ出し触れさせる必要がある。絵本や図鑑を眺めるのと直接触れることの差は比べものにならない。
外は危険な世界だ。家の中と比べれば自然の脅威のリスクは跳ね上がる。リスクがあるからといって外の世界から遮断した環境で育つと、1人では生きていくことができない大人になってしまう。親として子供を守ることと同じくらい、世界の厳しさを教えることは大切な責務だ。だからこそ、子供の手を引き外へ連れ出してほしい。
そして、まず昆虫の捕まえ方を教えてほしい。

狩りに行こうぜ

大都会に住んでいようと昆虫の生息している場所は必ずある。大きな公園には必ず魅力的な昆虫がたくさん生息しているので格好の学び場だ。
まず比較的簡単に捕まえることができ、魅力的な蝶、バッタ、てんとう虫といったメジャーな昆虫を捕まえてその格好良さや可愛さを教える。実際に飼育するのが1番いい。近くで細部を観察することで体の作り、動きがわかり、何を食べ、生きているのかをより深く理解できるようになる。飼育する中で昆虫を死なせてしまうこともあるだろう。そこで飼育することの難しさ、命の儚さを学ばせ、どうすれば長生きさせることができるのかを考え、調べ、実践する中で育成を学んでいくのだ。
メジャーな昆虫採集に慣れてきたら捕獲難易度の高い、希少な昆虫を捕まえたくなるのが人の性。ポケットモンスターがここまで流行ったのはリアルの昆虫をデジタルのモンスターに置き換えたからだろう。ポケモンも可愛いくて、カッコよくて、レアなモンスターが1番人気がある。
ここからは激レアで可愛くて格好いい昆虫を何匹か紹介しよう。

見つけるのは簡単だが捕獲難易度の高い昆虫

・アオスジアゲハ
名前の通り羽に綺麗な青いスジが入ったアゲハ蝶で幼虫が楠の葉を食べるので楠木周辺でよく見かける。他の蝶に比べて飛翔スピードが非常に早いので飛翔中の捕獲は難しい。楠木の葉に止まっている時は絶好の捕獲チャンスだが楠木自体が低い位置に葉がないため捕獲は厳しい。 

・オニヤンマ、ギンヤンマ
田舎の川辺で大きくて、速いトンボを見かけたらこのどちらかだ。オニヤンマは10cmくらいあるトンボ界最大サイズでスズメバチすら捕食することから昆虫界最恐のハンターと恐れられているようで、見るだけで多くの虫が逃げていくことから最強の虫除けと言われるトンボ。飛翔スピードはもちろん、俊敏性も凄まじく、捕獲は難しい。
ギンヤンマはオニヤンマほど大きくはないのだが、飛翔スピードはオニヤンマよりも早く、時速70kmという昆虫界最速のスピードを誇る故に捕獲は困難を極める。

遭遇したら奇跡の激レア昆虫

・カメノコテントウ
最大のてんとう虫で1cmを超えるサイズもいる。ナナホシテントウが5〜8mmくらいなのでかなり大きい。てんとう虫は「幸運のシンボル」「神の使い」とも言われており、とても縁起が良い昆虫だ。その中でも希少且つ最大のサイズを誇るカメノコテントウは最大に縁起が良いが、自力で探すのは非常に難しい。
・タマムシ
美しい昆虫の代名詞ともなっているタマムシ。緑と赤いラインの金属光沢があり、飛んでいる姿が特徴的なので田舎ではたまに見かけることができるが飛行高度が高く、ケヤキやエノキの葉を好むようで低地に来ることがないという意味でも遭遇はレア。
・オオクワガタ
黒いダイヤモンドと言われる昆虫界のキング。
大きければ大きいほど希少性が高く、数十万の価値がつく個体もいる。
素人に遭遇は不可能。金と時間と情報を大の大人がフル動員しても遭遇できれば奇跡。

以上のような昆虫は大人となった我々でも遭遇や捕獲が難しいが、遭遇、捕獲できたときの喜びはひとしおだろう。

昆虫採集から何を学ぶか

激レアな昆虫を探し、捕獲し、飼育しようと試みる子供たちは知らず知らずのうちに多彩な能力を身につけることになる。これは国語、算数、理科、社会を学ぶよりも大事なことだ。
・行動力
まず昆虫の生態等の情報を収集しないと探し場所がわからない。そもそも外を歩き回らないとけして捕まえることができない。
当たり前のことかもしれないが、今の時代ゲームの中で採集遊びをしている子供の方が多く、自分の足で外を歩き回る必要がないのだ。しかも課金すればほしいレアなものが手に入るときている。これではけして行動力は身につかない。

・忍耐力
暑さ、風、雨、外に出ることは忍耐がいる。一定の季節や時間帯、木の上、土の中、水の中と様々な条件が合致した場所でしか見つけることができず、昆虫採集は忍耐との戦いだ。

・育成力
生き物を育てることは難しい。特に昆虫のような小さく弱い生き物は尚更だ。ちょっとしたことですぐに死んでしまう。常に気を配り、良好な環境とエサを与え続ける必要がある。情報を集め、トライ&エラーを繰り返す中でしか学ぶことはできない。
人間として育成する能力は1番重要と言ってもいい。植物や動物を育てないと人間は食べ物を得ることができない。部下を育てないと組織は成り立たず、社会も成り立たない。子供を育てないと人類に未来はない。
これほど重要な育成力は昆虫等生き物の飼育で身につくだろう。

他にも考える力、諦めない力、探究心、達成感とあげればきりがない力と経験を身につけることができるのが昆虫採集だ。
昆虫採集で学んだ能力があれば、勉強、スポーツ、人間関係と多くの場面で役にたつ。子供の頃から自分のほしいものを自ら考え、行動し、努力して手に入れた成功体験があれば、大人になっても対象が昆虫から違う物に代ったりするだけでやることは変わらない。
情報を集め、自分の足で外へ繰り出し、トライ&エラーを繰り返し、学び、手に入れ、育てる。

男児として最も重要な能力は全て昆虫採集で身につくのだ。

さあ、子供の手を取って外へ飛び出そう。




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