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真夏の夜の夢

子どもの頃は、寝る子は育つとよく言ったものだ。
しかし育ちきったこの歳になるともはや、何のための睡眠なのかと思うことがある。
体力を回復させる。
そうはいっても、そもそもの体力がまず土台薄い。
やれ夢見が悪い、やれ肩を寝違えたと、ぐったりして目が覚めることも珍しくない。

先日、飼っていたハムスターが自転車のカゴから脱走した。
あっという間に走り去る毛玉。
呆気に取られ、その姿を見送ってからしばらく、ぼうっと立ち尽くしていた。
しばらくして、やはり諦めきれず、のろのろと行方を探しはじめる。

そこで目が覚めた。
夢とは支離滅裂なものだということは承知している。
悪夢なんて強烈なものにはなかなか出会わないけれど、やんわりと後味の悪い夢はじつに多い。
ハムスターなど飼ったこともないのに、どこから私の頭に迷い込んできたのか。

連れ帰った暑さは涼しい部屋で洗い流したはずなのに、どこか身体の端に熱が残っている。
眩しすぎる昼から逃げているうち、すっかり夜行性になってしまった。

窓を開けて温度を確かめる。
真っ暗の一歩手前の空に、シルエットの家々が浮かぶ。
涼しげな色彩とはうらはらに、むっとした空気が室内に流れ込む。
寝苦しい夜は、またじわりと汗の滲む夢に苛まれそうだ。

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