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贈り物の蓋を閉めるまで。

ここ数年、贈るにしても貰うにしても、誕生日プレゼントというものが即座に思い浮かばなくなってきている。
子どもの頃はあんなに次々とあれが欲しい、これが欲しいと言えたのに。
誕生日が嬉しいか否かも、なんだか揺らぎつつある。

しかしやはり、遠く離れた友人になにか、とは思う。
あの和菓子は去年送ったし、クッキーを食べたくなる季節でもない。
かといって、雑貨なんておよそ見当違いなものを送ってしまいそうで。

そんなことを考えていたら、あれよあれよという間に一週間、二週間が過ぎ、もう日がない。
さて困った。

贈り物慣れしている人というのはいるもので。
心ばかりですがと、さっと気の利いた小品で相手を驚かせる。
きっと、日頃からちいさな素敵なものに反応するアンテナを持っている人なのだろう。
あぁこれはあの人に似合う、とか、こんなものをあげたらきっと彼女は喜ぶだろうな、とか。
大切な人たちをいつも心に留めているからこそ、気づけるにちがいない。

なかなかそんなふうにはいかないけれど、引き続き、あれこれと思い巡らせてみる。
美味しいものやかわいいものはあふれているのに、贈る相手にふさわしいものを探し出して結びつけるという作業の難解さ。
昔、縁日にあったくじのように、狙ったおもちゃと紐の先が結びついていないような感覚。
普段、顔を合わせることのなくなった人ならばなおさら、喜びの糸端は見えづらい。

それでも、誰かに贈るための「あれでもない、これでもない」は、自分にもささやかなわくわくをプレゼントしてくれる。



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