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一目惚れの足音

言い訳は出来ない…。
うわーーーーぐやじぃぃぃいい。
女の子との出会いを期待して気合い入れて
オシャレして行ったのに〜…。
BGMの波の音と共に心の声がこだましている。

久方ぶりに今朝4時過ぎまでイベントで飲んで踊ってオールした。
スタートは22時。
お目当てのクルーの出演は深〜い3時過ぎ。

今回は、普段あまり聴かないHipHopのイベントだったんだけど、人見知りのぼくは毎度些細な緊張を孕んで一人で乗り込む。

一緒に行くほど仲の良い友が今回は居なかったから。

でも兎に角音楽が大大大好きだから、心地の良い音楽さえフロアに流れてれば一人で踊るだけだから心配してなかった。

入り口をくぐってはじめの感想は、
誰もが抱くような【THE  HIPHOP】だった。

あれっ?いつもと違うぞ!?
顔馴染みが見当たらない!!!
モジモジ………

(以下イメージです…)
ナイキのAirforceOneやTimberlandの靴に、

下半身がダボッとしたデニムパンツやチノパンツに大きめのパーカーやアウター、

ニット帽やKANGOLのハット、

全体的な色は、黒・グレー・紺・白・カーキ等の落ち着いた配色のコーディネート。

よく行く箱(クラブラウンジ)なのに、別世界に来てしまったかのようなアウェイな空気感。

取り敢えず酒を取りに行って、何食わぬ顔で溶け込もう!
とは行かないくらい、ぼくの格好は派手だ。

折り紙付きなんだがw

ブランケットにも使える幅広厚手のエメラルドグリーンをベースに、

ベージュと白の毛糸が編まれていて赤や橙や紫や青で植物の柄があしらわれた、エスニックマフラーの下に

落ち着いた色褪せ気味ブルーと白に青が浮き出た砂嵐みたいなボーダーの
前が空いた、これまたエスニックのポンチョの下に

蛍光ピンクの薄手のシャカシャカパーカーを着ていて

パンツは明るい紫のBIGサイズを靴から10cmロールアップ。

靴下は蛍光イエローで、

靴は蛍光イエローと蛍光水色と蛍光オレンジが混ざったReebokのインスタポンプフューリー。

周りのファッションが落ち着いていて他ジャンルってのもあって、ぼくは浮いている。
原色の派手な人だ。

服好きなぼくはコーディネートを愉しむ時、同じく服好きが反応してくれたら嬉しい。

行ったときはまだ居なかった仲の良い友達は、古着屋のオーナーだから間違いなく食いついてくれるのはわかってた。

でもその時間は居なかった。
ただ酒をすすって音に合わせて踊るしか無かった。

今まで行ってたイベントは規模が小さかったのか、今回のイベントは客で溢れていた。
そして女性客も多かった。

ここ何日か連続して【出逢い】をテーマにしてきたが、やはり恋がしたいのである。

やはり男の性、然りげ無く女性を目で追ってしまう。
美しい女性を見ると癒やされるから。

男女比で言ったら、男の方が大分多かったけど光る女性たちは皆美しかった。

箱の雰囲気は、
一階は明るめのLounge、二階は暗めのClubといった感じだ。
どこにいても女性が気になってしまう。

なのに………なのにだ…………目で追うことしか出来ない。

チキンだから。
めちゃくちゃ話したいのに、きっかけを探してしまう。
それで時間が終わっていく。

役者をやってた時の名残りで人間観察が得意だから、話し始めは相手の外見を褒めるのが常套手段なのに、全く声にならなかった。

順位を付けるわけではないけど、自然と好みな女性を見ていた。
踊りながら横目で、踊りながら背中で、感じて独り愉しんだ。

完全に童貞中学生みたいだ。
とにかく恥ずかしいのだ。

ファッションに自信があろうと、身長が高かろうと、イケメンであろうと、シャイなのだぼくは。

2時間経ち、箱内の客が入れ替わった。
新たな女の子がやってきた。
ファッションが兎に角可愛くて、顔もタイプ。
キターーー\(⁠〃゚⁠3゚⁠〃⁠)/ーーーー♡

ヤバい、今までと違うぞ!
彼女と話したい!!!

なのに、髭面の優しそうな男が連れなのか、
連れが居る女性には行きにくい。
友達である可能性だってあるのに番犬なんじゃないかとビビる。

想像は想像、絶対にそんなことはない!
みなフレンドリーだ。
楽しみに来てるわけだからね!

女性に隙が無いか探る。
だけど………。

髭面の小さな番犬は常に近くにいる。
まぁ、可愛いからな、近くに居たいよな。
くっそ〜。

イベントもそっちのけで、ヘパリーゼとソルマックを飲んだのに良くならない胃痛と、ドタイプの可愛すぎる女の子を目で追うのに必死だった。

そんなこんなしてる内に、お目当てのクルーのライブの時間になった。

彼らは二人組で1人がDJ、1人がラッパー。
彼らの曲を聴いてまたひとつ好きなラッパーの曲を知り得たんだ。

【RICHMOND】これが彼らの名前だ。
各音楽配信サイトで聴ける。音楽好きには刺さるはず!

ラッパーが仲良くて、上記の古着屋の店員でもある。だから、余計にライムが響く。

箱に来てから4時間待ってのライブはそれはそれは最高だった。

めちゃくちゃDEEPなDOPEにDIVEした。

音楽と一体になって陶酔して踊ってたら、
な、な、な、な、なんと!
横にあの、意中の女性が!!!

なのに、なのに、音楽に引っ張られ踊り続けた。心と脳は右隣にガッツリ引っ張られながら、無心のフリして踊った。

お目当てのクルーの後は最後のDJが回していた。

まだ隣で彼女は踊ってたんだけど、
今更後悔が………
なんで、話さなかったんだろ………

周りに、顔馴染みの男たちが………
羨ましい!!
なんで俺は彼女の顔馴染みじゃないんだ!!!

頭ばかり膨らんで現実では
ただ見つめる事しか出来ない弱い弱いぼくが居た。

意識しすぎた。
意識しすぎたから余計行けなかった。

客もあっという間に数人しか居なくなって
それなのに彼女はまだ居たのに
なぜ……………

白青紫の証明を浴びてるぼくの先の暗闇で
彼女は踊っていて
なんとなくこちらを気にしてくれてる気がしてたのに。

彼女は何度か近くを通り過ぎてチャンスをくれてた気がするのに。

【すいません、オシャレだなぁと思ったので写真撮らせてもらえませんか?Instagramでシェアしたいんですけど。】

たったこれだけが言えなかった。

最後に見た彼女はバーカンの男たちと話していた。いい女はモテる。
歩く度に男たちが離さない。

知ってる。
そう知ってるんよ。
高嶺の花への近付き方は、勇気を振り絞って声を掛けるだけってことを。

お酒の力なんて吹っ飛ぶ位緊張する。
だからもっともっと自分磨きして自信を持とうと思った。

めちゃくちゃ悔しかった。
後ろ髪を引かれまくって帰宅した。

寝る前に、誰か彼女のアカウントをメンションしてないかなぁ………
と探してみたら、

2年ぶりに今回のイベントで再会したモヒカン男がメンションしてて、テンション爆上がりした。

後先考えず、鍵垢だったけどフォローリクエストを送った。俺が今出来る最大限の抵抗だった。

どうにでもなれっ!って口に出してスマホの電源を消して寝た。
4時間位寝て、8時過ぎに目が覚めた。

瞑想用のBGMで波の音を流してたら、音と共に意中の彼女の姿が浮かんだ。
自分とは一切絡んでないのに、何惚れてんだ。

でも、めちゃくちゃタイプやってん!
見た目だけな!

声も性格も現在の男事情すら何も知らない。

もし特定の男の女ならクラブイベントのラストまで1人残るか?
あり得るな。あの残りの男たちの中に居たのか。

しかし最後の最後まで残って話しかけて連れ出す事だって出来たかもしれない。
でも、この出逢いを大事にしたかった。

また仲間のクルーのイベントさえあれば会える!と思った。

そう確信してたから。
この細やかな気持ちを大切に温めようと思った。

また会える。きっと会える。
だって俺が惚れたオンナだから。

チャンスは何度だってある。
女神の前髪は短いと言うけれど、
大丈夫!

俺は俺を信じてるから。
だって、俺ほど派手な男は他に居なかったから。目に焼き付いてるはず。

キモいと思われようが、一途な真剣な想いなんだ。

最低ラインを下回って敗北した
星名大豆の冒険活劇

これにて、おしまいっ!!!


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