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「MUCA」展(六本木) レポ

あなたのハートに突き刺さる。

まずは概要から。2024年3月15日から六本木にある森アーツセンターギャラリーにて開催中です。巡回展で、大分・京都からこの東京会場にやってきました。今回行ったのは土曜日でしたが、わりと人が少なかったので、序盤のうちに観に行っておいたほうがゆっくり鑑賞できるかと思われます。
6月2日まで開催、日曜から木曜までは10時~19時開館、金曜・土曜・祝前日とゴールデンウィーク(4月27日~5月6日)は10時から20時までやっているそうです。当日券は一般平日2400円なので、仕事終わりに行くのがオススメです。日時指定予約制なので、狙ったらもうすぐにチケットをおさえましょう。
ちなみに、図録は2500円ですがひとつひとつの作品をじっくり取り上げてくれているので、アーバンアートについて知りたい、あるいは好きな作品が見つかった、という方に大変おすすめです。

政治思想性とアート

このMUCA展に作品を出しているアーティストは、ほとんど存命の方です。
だからこそ、これからの進化を見届ける愉しみもあるのですが、アーティストの想いを感じ取れるインタビュー映像も豊富で、大変勉強になりました。
お気に入りはこれ。バンクシーの作品《鉤爪》です。キリストの磔刑をかたどった神聖な(あるいは再生を願うような)ものに、凶悪な爪とロープが合わさって、二重性を感じさせる作品です。何枚も写真を撮ってしまいました。

バンクシー《鉤爪》

バンクシーやカウズに代表されるアーバンアート(現代アートの最先端)の多くは「破壊と創造」や「政治思想性」と切っても切り離せない関係にあります。
19世紀前半までの絵画は、写真の代わりが絵画だという側面が強く、また階級社会が未完成であったことなど、様々な理由から「反逆」の意思があまり感じ取れない反面、現代アートは「反戦」「環境保全」など様々なメッセージ性を持った作品が並んでいる印象を受けました。
もちろん19世紀以前の作品をけなしているわけではなく、おそらく「特定の時代までは、そういう政治的なメッセージの発信が必ずしも重視されるわけじゃなかった」だけだと考えています。
モネの《睡蓮》はおそらくInstagramのようなもので、美しいから描く、というある意味で自由なアート世界だったけれど、世界が戦争に包まれて、そこから人間の生き方を見つめ直す視点が必要とされてきて、アートで何か発信できないかと考える人が出てきたからこそ、バンクシーなどは「時代の寵児」にあたるのではないかと。
そのメッセージを受け取った我々は、どうするべきか、ということを考えさせられる、大変勉強になる展示でした。

写真撮影・動画撮影がほぼ全作品でOKというかなり珍しい展示なので、お早めにどうぞ。

バンクシー《アリエル》

今後の執筆の糧を頂戴できれば幸いです。お気持ちだけで結構です。