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大切にしたい日本語

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私が大切にしたいと思う、日本語の語彙や慣用句などを集めてみました。末尾には自作の俳句を添えています。
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記事一覧

安寧

 安寧《あんねい》を辞書で調べますと、世の中が平穏無事なこと、とあります。「社会の安寧を願う」などのように使います。
 安全や安定とは違い、初めから世の中の状態を表していますので、「安寧な作業」や「血圧を安寧させる」などとは使いません。
 誰もが安寧な日々を願うと思いますが、世の中は事件や事故が多発しているのが現実です。とくに最近はそう感じてしまいます。
 昔は、田舎は安全な暮らしが営まれていると

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髑髏

 髑髏《しゃれこうべ、されこうべ、どくろ》を辞書で調べますと、風雨に晒され白骨になった頭蓋骨、とあります。
 現在の世の中にも、猟奇的殺人などの末、地中から白骨化した遺体が見付かった、などという事件が起こっています。ですが、侍の時代には、道端や川岸などで遺体が見付かるなんて、それこそ時代劇のようによくあったことなのかもしれません。
 現実的には、捜査関係者や医療関係者以外で、髑髏を見る機会なんて滅

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鎮守の杜

 鎮守の杜を辞書で調べますと、鎮守の杜の境内にある森、とあります。何かちょっと変な感じではあります。鎮守の杜の意味を調べるのに、回答の中に「鎮守の杜」を使ってあるからです。つまり、神社の境内にある森、ということですね。辞書では、たまに説明が可笑しいところもあるのですね。
 三浦しをんさん作の小説、「舟を編む」は、新しい辞書を刊行するまでの、辞書編纂者たちの姿を描いた作品です。自分たちで辞書を作るな

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人体大和言葉

 今日は特別編として、人体の部位を大和言葉で読んでみましょう。大和言葉は、日本人の心根に染み込んでいると思います。

顔《かんばせ/かお》
脳《なずき/のう》
額《ぬか/ひたい》
眼《まなこ/め》
背《そびら/せ》
腕《かいな/うで》
掌《たなごころ/てのひら》
踵《きびす/かかと》
咳き《しわぶき/せき》

 まだまだあるとは思いますが、私が知っているのはこれくらいです。「他にもあるよ」

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口吻

 口吻《こうふん》を辞書で調べますと、口先、口元。(その人の内心がそれとなく分かるような)話し振り、口振り、とあります。「彼の口吻から考えていることが分かる」などのように使います。また、口吻は考えていることと逆のことを相手に摑ませることもできます。高等技術でしょうが……。
 口吻もまた、現在ではあまり使われたくなった言葉です。口先、口元が一般的ですね。体の部位を表す言葉には、この他にもいろいろと使

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静謐

 静謐《せいひつ》を辞書で調べますと、静かで穏やかなこと、様。世の中が治まっていること、様。静穏、とあります。「静謐が部屋を支配している」などと、小説などでは使われています。
 外の世界では、夜の田舎にでも行かなければ、静謐が訪れることは滅多にありません。部屋のベッドに潜り込めば、静謐と呼べるものが訪れるかもしれません。部屋の明かりを消して、TVや携帯電話の電源を切っておけば……。
 世の中に関し

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瀟洒

 瀟洒《しょうしゃ》を辞書で調べますと、さっぱりして気が利いている様、垢抜けている様、とあります。「瀟洒な住宅」、「瀟洒な女性」などのように使います。
 さっぱりしていて、しかも垢抜けているとは、難易度が高いですね。私には当てはまりそうにもありません。
 この言葉も、普段は使うことがありませんが、「お客様は瀟洒な屋敷にお住まいですね」などと、どこかの営業担当者は使っているかもしれません。
 瀟洒の

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逍遥

 逍遥《しょうよう》を辞書で調べますと、気儘《きまま》にぶらぶら歩くこと、漫《そぞ》ろ歩き、とあります。「海辺を逍遥する」などのように使います。
 私はあまり、近所をぶらぶら歩くことはしません。散歩の習慣がないのです。風光明媚な観光地が近くにあれば歩いてみるかもしれません。否、やはり私のことだから三日坊主になることでしょう。
 散歩が日課の方は、寒い冬を抜けて、暖かな春を迎えるこれからが楽しみでし

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間、髪を入れず

 間髪を入れずを辞書で調べますと、髪の入る間隙もないほど、間を空けずに、とあります。「間、髪を容れず」とも書きます。本来「間、髪を入れず」という意味であり、「間髪」という名称の何かがあるわけではありません。
 使い方としては、「間、髪を入れず次の行動に移る」などがあります。
 我が国の政治家こそ、間、髪を入れず様々な問題に対して行動してほしいと思います。女性問題に関しては、間、髪を入れず行動してい

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怒髪、天を衝く

 怒髪天を衝くを辞書で調べますと、激しく怒って髪の毛が逆立った凄まじい形相、「怒髪、天を衝く」と区切る、とあります。
 この言葉も、「怒髪天を衝く」の慣用句として使われていますが、「怒髪、天を衝く」が正しいのです。
 「怒髪、天を衝くとは正に、今の彼の様相のことだ」のように使います。彼の怒りの凄さを表しています。
 現代では男性よりも女性の方が、怒髪、天を衝くような怒りの大きさを溜め込んでいる人が

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綺羅、星の如く

 綺羅星を辞書で引きますと、きらきらと光り輝く無数の星、地位の高い人や明るいものが多く並ぶ様子の例え、「綺羅、星の如く」の略、とあります。「綺羅、星の如く並ぶ新一年生」などと使います。
 この言葉、「綺羅星」と一つの名詞として使われたりします。きらきらした星をイメージしますが、「綺」は綾織の絹のこと、「羅」は薄絹のことで、「綺羅」は美しい衣服のことだそうです。
 もう少し先の話になりますが、桜の花

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快刀、乱麻を断つ

 快刀乱麻を辞書で引きますと、こじれた物事を非常に鮮やかに処理し解決すること、「快刀、乱麻を断つ」の略、とあります。「快刀、乱麻を断つほどの活躍で、社内問題を沈静化させた」などと使います。
 ですが、この言葉も例に漏れず、現在では使う機会はありません。時代小説や時代劇などに使われる程度でしょう。
 現在の日本には、政治、経済、教育、福祉、環境などの分野で、様々な問題を抱えております。一挙に片付ける

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出で立ち

 出で立ちを辞書で引くと、いろいろな意味が出てきます。装い、身なり、身支度。旅行などに出発すること、旅立ち、門出、出発。世間に出ること、立身出世。門を出たところ、門前。旅立ちの際の食事、でたち。
 多くの意味がありますね。私は、装い、身なり、身支度の意味でのみ使っていました。そもそもこの言葉も、最近では使われなくなりました。
 初めて会う人の出で立ちは、その人の第一印象を左右する重要な点の一つです

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万物の霊長

 万物の霊長を辞書で引きますと、万物の中で最も優れているもの、すなわち人間、人類、とあります。これは当然、当事者である人間が作った言葉、人間が決めた意味であります。万物を辞書で引きますと、宇宙に存在するすべてのもの、ありとあらゆるもの、とあります。
 私たちは常に、万物の代表である言動をしているでしょうか。自分勝手に、つまり人類勝手に振舞ってはいないでしょうか。地球の環境を破壊したり、花や鳥を傷付

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