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お稽古場探訪⑧【辰巳満次郎 先生】夏休み親子教室

宝生流能楽師の先生とお弟子さんに
能を「習うこと」の魅力をお話いただきます。

「能を習ってみたいけど、誰に習ったら良いか分からない。
先生の雰囲気を知りたい。
稽古場の情報を教えてほしい。」

という方はぜひご参考にどうぞ!

第8回目は
宝生会 普及企画委員長の
辰巳満次郎(たつみまんじろう)先生です。
鳩森八幡神社でのお稽古や、
夏休み親子教室についてお話を伺いました。

■辰巳満次郎 Tatsumi Manjiro
シテ方宝生流能楽師
昭和34(1959)年、兵庫県生まれ。辰巳孝(シテ方宝生流)の次男。1964年入門。18代宗家宝生英雄に師事。初舞台「国栖」子方(1964年)。初シテ「敦盛」(1981年)。「石橋」(1989年)、「道成寺」(1993年)、「乱」(1995年)、「翁」(2008年)を披演。


──満次郎先生の稽古場情報を教えてください。
東京の稽古場は鳩森八幡神社月3回、曜日は不定ですが、朝の10時から夜10時までやっています。
国立能楽堂の近くをたまたま通りかかったときに、こちらの立派な能舞台を見つけました。社務所に行って、「この能舞台は稽古に使ってもいいんですか?」と聞きましたら、「ぜひどんどん使ってください!」と言ってくださったので、それから稽古場として使わせていただいております。

一般的に神社には神楽殿があったりしますが、ここの宮司の矢島さんという方が、神楽も能もできるように能舞台を造られたそうなんです。矢島さんは宝生流を習っている方でもありました。

鳩森八幡神社の能舞台

舞台はガラス張りで丸見えなので、稽古しにくくて嫌厭する人もいるみたいですが、僕の場合は宣伝だと思って使わせていただいています。
お昼時にはお昼ご飯を食べながらお稽古を見ている人もいますね。桜の時期にはお花見で人がいっぱいになるんですよ。すごくみんなが見てくれる場所です。ご覧になった方の中には稽古をしたいと言ってくださる方もいました。

ガラスは防弾になっているのですが、なぜ防弾なのか知っていますか?
普通、神社の能舞台は雨ざらしか、雨戸で塞ぐことが多いですけど、宮司の矢島さんはみんなに見せたかったのでガラス張りにしたみたいです。でも、透明だから鳩やカラスがぶつかってきてしまったようで、防弾ガラスに変えたと聞きました。

⭐️鳩森八幡神社での稽古風景はこちら


──東京以外のお稽古場所はどこですか。

大阪の実家の能舞台でお稽古したり、三島、藤沢、厚木、熱海、名古屋、豊橋、亀岡、芦屋、金沢などでやっています。一番多いときでは月に17か所お稽古に行ってましたね。とにかく移動が多いので、一週間で新幹線に4回くらい乗ります(笑)。


──満次郎先生のお稽古で大切にされていることは何ですか。
やっぱり楽しく稽古をしてもらうということですよね。いろいろな趣味やお稽古事はあると思いますが、日本の古典をやるということは、日本の心を学ぶためにやることですから、ルールをきっちりやらないといけない部分もあります。

そのルールを決めた理由が必ずあるんですよね。
能には不自然な動きはなくて、理にかなった動きしかやらないんです。能では左から歩く、右から歩くのにも理由があります。足袋を履く順番にも決まりがあります。
お稽古をしていく中でそれも感じてもらう。そうすると単純に覚えてやるというのではなくて、いろいろなことに気づくことができると思います。

楽しくやっていただくのと、深く感じてもらいたいというのがお稽古で望むことですね。

──先生の公演情報を教えてください。
■7月31日(月) MOA美術館「夏休み能楽教室2023」
子どもも大人も楽器の演奏や、能や狂言の所作を体験することができます。体験後には「小鍛冶 白頭」を観賞いただきます。美術館で美術鑑賞もできますし、近くの海や温泉に入ったりもできますよ。
※好評につき完売いたしました。

■8月3日(木) 身曾岐神社 薪能
山梨県の身曾岐神社で薪能をやります。上は満天の星空、下には池のある最高のロケーションに能楽殿があるんです。そこで毎年、家元と一緒に八ヶ岳薪能をやっています。ぜひ来ていただきたいですね。

■8月19日(土) いわむら城 薪能
岐阜県のいわむら城で薪能をやります。おんな城主の里として有名な場所ですよね。おんな城主や家来たちの魂を鎮めるために毎年薪能をやっています。今年は「鞍馬天狗 白頭」のシテを勤めるのですが、花見の稚児役には地元の子どもたちを募集しています。

■9月22日(金) 日本全国 能楽きゃらばん 大阪宝生流特別公演
能「烏帽子折」のシテを勤めます。

── これから能を習ってみたいと考えている方にメッセージをお願いします。
能はどんな人でも体感すると良いことがあると思っているんです。主婦や子ども、年配の人でも、ビジネスマンや経営者でも。
日本文化ってどの分野にも活かせて、能をお稽古したり、観たりすることはどんなことにもプラスになると思います。

マナーを覚えること、声を出すこと、姿勢を良くすることも全ては見ている人に対して美しい姿をするということです。美しい姿を崩さないのは、その相手をリスペクトしているということになりますし、リスペクトしている姿を見せると気持ちいいでしょ。

そして、能は心を落ち着かせることができます。普通のエンターテインメントのようにわくわくしたり騒いだりするものではなくて、能は引き算なんです。観る人が足し算する。足し算のものを観ると誰も足し算しません。引き算したものを自分が足し算して感じるのは、日本人が大昔からやっていたことです。
俳句でも和歌でも短い文字数でいろんな世界を作るわけじゃないですか。日本人って想像して足し算するのが昔から得意だし、楽しんできた。能はそれをやっているんです。
見るだけでなく、お稽古で自分も引き算をやってみるっていうのが最高に面白いことだし、良いこと尽くめだと思います。

僕の会では一ヶ月無料体験をやっておりますので、まずはぜひご参加してみてください。

⭐️満次郎先生の稽古体験の申し込みはこちら


夏休み親子教室に参加された学生さんにインタビュー

2023年7月22日から「宝生流 夏休み親子教室」がスタートします。
今回は、毎年リピートして参加している学生さんに感想を伺いました。


──参加したきっかけを教えてください。
初めて夏休み親子教室に参加したのが、小学校1年生のときでした。宝生能楽堂の近所に住んでいたんですが、区のパンフレットで母が見つけて、楽しそうだったので母と一緒に参加したのがきっかけです。今年、高校1年生になったので続けて10年目になりますね。学校外で友達を作る機会があまりないので、夏休みに能楽堂で同じ年代の人たちに会えて楽しいです。

満次郎先生:同窓会のようだよね。
彼女は最初からすごく優秀でした。彼女が小学生のころから僕は親子教室の校長としてやっています。彼女と同じように親子教室にはリピーターの子が多いですね。


⭐️2023年度「宝生流夏休み親子教室」
参加者を募集中です!
7月22日(土)〜8月22日(火)

──親子教室にリピートして参加している理由は何ですか。
この教室では1回で1つの演目をお稽古して、最後に発表会で披露しています。夏休みってあっという間に終わっちゃうじゃないですか。その間に1つの何かを完成させて他の人に披露する機会はとても有意義な時間になるんじゃないかなと思います。

──同級生で能を習ったことのある人は少ないと思いますが、どのような反応をされますか。
友達には「能で浴衣を着るんだ♪」と自慢するとびっくりされますね。
周りで能をやっている人はいなくて、私は長い間やってきたものなので、能は自分の個性の一つになった気がします。

満次郎先生:日本の文化を語れるよね。
昔は寺子屋で子どもたちみんなが能を習っていたんですよ。読み書きのテキストが能の台本だったようです。

──発表会をやってみてどうでしたか。
最初の頃は発表会がわくわくで楽しみ!という感じだったんですけど、どんどん学年が上がってくるにつれて本番は大丈夫かなって緊張が出てくるようになりました。

満次郎先生:求められることが上がってくるからね。
人間って、一生のうちに主役をやるってそんなにないでしょ。生まれたときと死ぬときと。あと、結婚式などもありますが、自分が主役をやるのは数回しかない。夏休み親子教室では毎年みんなが主役をやるわけですよね。
勉強だと80点でも90点でもいいときもあるけど、能の発表会ではやり遂げないといけない。締め切りもある中でやる、というのは達成感があるんじゃないかな。

──満次郎先生の雰囲気はどのような感じですか。
厳しいですけど、丁寧にちゃんと重要なポイントを伝えてくださるので分かりやすいです。

──周りで能を習ってみようかと悩まれている方がいたらどのようにお声がけされますか。
私が最初に参加したときは小学1年生だったので、能のことを全く知らずに親子教室に入りました。音楽の教科書では、能はご年配の方向けで若い人が手を出すものじゃない雰囲気を感じるのですが、そういう先入観がなければ、やって楽しいと思います。


インタビューにご協力いただきありがとうございました!

夏休み親子教室について
こちらの記事も併せてどうぞ♪


インタビュー日時:7月7日(金)、宝生能楽堂稽古舞台にて。

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