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お稽古場探訪⑦【関直美 先生】銕仙会能楽研修所

宝生流能楽師の先生とお弟子さんに
能を「習うこと」の魅力をお話いただきます。

「能を習ってみたいけど、誰に習ったら良いか分からない。
先生の雰囲気を知りたい。
稽古場の情報を教えてほしい。」

という方はぜひご参考にどうぞ!

第7回目は
関直美(せきなおみ)先生です。
銕仙会能楽研修所でのお稽古についてお話を伺いました。

■関直美 Seki Naomi
シテ方宝生流能楽師
1964年、北海道帯広市生まれ。2001年入門。19代宗家宝生英照、20代宗家宝生和英に師事。初舞台「海人」子方(2003年)。初シテ「花月」(2009年)。これまでに「乱」(2022年)を披く。音楽博士 平成30年度東京都女性活躍推進大賞優秀賞受賞

──関先生の稽古場情報を教えてください。
表参道にある銕仙会能楽研修所や赤坂の偕香苑などでお稽古させていただいております。
お稽古日は、毎週何曜日と決めていなくて、毎月ランダムで5回設けるようにしています。5回のうち1回は銕仙会を使わせていただき、残りは偕香苑をお借りしています。
銕仙会は土日、偕香苑は平日が多く、いずれもだいたい15時から21時くらいまで、お勤めの方にも通いやすいように夜までお稽古しています。

銕仙会の本舞台

──稽古場の特徴を教えてください。
こちらの銕仙会は観世流の観世銕之丞先生の舞台です。表参道というとても立地の良い場所にあります。本舞台を使わせて頂く事により、発表会の時などと同じ大きさで舞えるように配慮しています。

表参道には美味しいご飯屋さんも沢山あるので、お稽古が終わった後にはお弟子さん達と食事に行くこともありますね。


──関先生のお稽古で大切にされていることは何ですか。
基本をしっかりと身に着けていただきたいということと、舞台で失敗したときにリカバーできるくらいの基礎力を持っていただきたいということですね。舞については、仕舞をしっかり習得出来たのち、舞囃子に進んで頂いています。力量を考えてから前に進む。その方が、一見まわり道なのかもしれませんが、後になってみれば近道だったということがあると思います。着実にご自身の実力をつけていただけるように、お一人お一人お稽古しています。


──先生の公演情報を教えてください。

7月1日(土) 夏の女流能において能「金札」を勤めさせていただきます。
私が能を舞わせていただくときには、可能な限り、その曲に所縁のある地に行って舞台の無事のためにお参りをしています。

今年の4月には京都の伏見にある金札宮へご挨拶に行ってきました。そのことをSNSに投稿しましたところ、金札宮の氏子さんが見て下さったんです。
「金札」というのはとても珍しい曲で、しかも前後ではなかなか上演されないのですが、その氏子さんは、「能の『金札』をまだ観たことないのでぜひ拝見したいです。」と仰って、7月の女流能に宮司様と一緒に来てくださることになりました。
金札宮に所縁のある能を勤めさせていただき、氏子さんや宮司様にも観ていただけるというのは大変有難いことです。心を込めて勤めさせて頂きたいと思います。

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──これから能を習ってみたいと考えている方にメッセージをお願いします。
能は敷居が高いと思われがちですが、そのように自分で敷居を高く作ってしまわないで、まずは体験していただければと思います。能はやってみると面白いんです。
私は「伝統の橋がかり」という伝統文化を普及・継承する団体を主催していまして、定期的に色々なことを企画しています。夏休みには子ども教室を開催しているのですが、子どもは敷居が高いという考え方がないので、やりたい!と言って毎年大勢参加してくれます。どんどん子どもたちにも能楽堂に足を運んで能を観て、習ってもらう。そして後世に繋いでいって頂けたらと思います。

🌻千代田区夏休み伝統文化ワークショップ

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関先生のお弟子さん3人にインタビュー

──お稽古を始められたきっかけを教えてください。
・私は2018年に千代田区の掲示板で能の体験講座があることを知りました。もともとお茶を習っていたので、能にも興味があったんです。敷居が高いと思っていましたが、体験ができるというので、これはいい機会だと思って参加してみました。その体験講座の最後は、実際に舞台で仕舞を舞うことになっていたんですよ。必死に覚えてやってみたら面白いなと思ったので関先生の会に入会させて頂きました。

・去年の2022年に宝生能楽堂のバックステージツアーに参加させていただいたのがきっかけです。あまり知らない世界だったので、そのツアーが非現実的ですごく新鮮に思い、能に興味を持ちました。ツアーが終わって、関先生から「今度ちょっとやってみない?」とお声がけいただいたので、せっかくだからやってみようと思って始めました。

関先生:私がバックステージツアーを開催した目的としましては、歴史ある水道橋の宝生能楽堂の普段は入れない楽屋などをぜひ見学して頂きたかったからです。ツアーの最後には足袋を履いて本舞台に上がり、面をかけて橋がかりを能のハコビの歩き方を体験していただきました。

──習い続けている理由は何ですか。
・大人になると何でもわりと上手にこなせちゃうじゃないですか。でも、能は全然こなせないんです!それってやりがいがものすごくあって。苦労して何かをやるのって楽しいですよね。
・私は発表会が終わったらまたもう一回やりたくなるんです。達成感もすごくあります。

──発表会に参加されてみていかがですか。
・緊張してはいましたが、始めたばかりだったので楽しいという気持ちになりました。
・私も発表会では先生方の迫力や素晴らしさに圧倒されて、楽しかった~!と言ったのを覚えています。
・私は初めて舞囃子をさせていただくことになって、申し合わせ(リハーサル)のときに緊張で膝がガクガクしちゃいました。この状態で本番は大変だと思いましたが、本番より申し合わせの方が緊張しましたね。
先生:本番では堂々としてやってたよね。

──関先生の雰囲気はどのような感じですか。
・先生が「そう!そう!」と言ってくださるのがすごく安心します。段階を追って進めてくださっているのが分かるので、大船に乗ったつもりでお稽古できています。
・私も何回も同じところができなくて躓いても、根気強く教えてくださるので、ありがたいです。
・先生のお稽古は厳しくもあるんですけど、必ず受け止めてくださるんですよね。こうでなきゃ!っていう感じはなくて。能だけに収まらないことなどもいろいろ教えてくださいます。
・あと、先生が子どもに教えているのが微笑ましくて可愛いんです!子どもにも厳しく教えていらっしゃるんですけど、その姿が可愛いなと思いながら見てます。
先生:子どもに教えるのは大変なんですよ。子どもは熱量があるから、こっちも真剣になってやっています。

──周りで能を習ってみようかと悩まれている方がいたらどのようにお声がけされますか。
・声も出すし体も頭も使うので、大人のお稽古としてはぴったりだと思います。お能は男性のもの、お稽古として女性が習うことはできないと思っていましたが、そんなことはありませんでした。子どもから還暦を過ぎた大人まで、女性の習い事としても楽しめるものです。

・私は「気軽に始めてみたらどうでしょうか?」って言いたいですね。私は謡が好きなんですけど、謡の中身も知ると、神社仏閣に行ったときに、これって謡で出てきたところだ!とわくわくします。あとは、謡の中に土地の名前が出てくると、自分も旅をした気持ちになりますね。そういう楽しみもあるのでぜひお稽古されると良いかなと思います。

・堅苦しそうとか敷居が高いとか思い込んでいるだけの人が多いと思うので、とりあえず一度実際に見てみれば変わる気がします。私は最初、全然声が出なかったんですけど、お稽古を重ねるにつれてだんだんと声が出るようになってきました。声を出すとすっきりするんですよね。動きも地味そうに見えて頭を使っているので、素敵なお稽古事だと思います。




インタビューにご協力いただきありがとうございました!


インタビュー日時:6月17日(土)、銕仙会能楽研修所にて。

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