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職業選択の自由?!性犯罪者を子ども関連の仕事につけてはならない。日本版DBS制度を解説

このところ学習塾で逮捕者が出たり、校長が性犯罪を繰り返していたという信じがたい事件が明るみに出たりしています。児童虐待の問題に取り組んでいると、家庭内で親からの性被害に遭うケースに接することがあります。こうしたケースは虐待であるだけではなく性犯罪そのものであり、厳格に処罰されるべきと考え働きかけをしてきました。しかし、教育現場における性犯罪がこれほど深刻だという認識は、正直に申し上げるとこれまで持っていませんでした。

DBS制度とは何か

教育現場で罪を犯した者が、再び教育現場に復帰して同様の犯罪を子どもに行うなどということは絶対にあってはなりません。英国、ドイツ、フランスなどの欧州諸国には、子どもと接する職業に就く際、性犯罪歴がないことの証明を求める仕組み(いわゆるDBS制度)が存在します。

託児会社を経営している友人によると、性的な対象として子どもに関心を持っている人物を雇わないように常に細心の注意を払っているということでした。日本版DBS制度を早期に創設する必要があります。

職業選択の自由と性犯罪

厳格なDBS制度を創設する際の最大の制約は「職業選択の自由」です。従来の憲法学説では、人権の中でも社会権とは異なり、自由権に制約をかける場合は、他の有効な規制手段が存在しない場合に限り、その目的(今回は性犯罪の防止)を達成するための措置として許容されるとされてきました。

しかし、小児性犯罪の場合は失われる法益があまりに大きいことに留意すべきです。被害者は一生癒えることのない傷を負う可能性があることを考えると、性犯罪者にも職業選択の自由を有することは認めるにしても、子どもに関わる職業は別に考えるというのは合理的な制約だと考えます。

塾やスイミングスクールにも適用される制度の早期成立を

問題の緊急性を考えるとこの臨時国会での創設が望まれたのですが、法案の提出は来年の通常国会に先延ばしされました。

第一の理由は、対象範囲をどこまで広げるかが固まっていないことです。政府内で検討されてきた日本版DBS制度では学校や保育所は対象となるのですが、塾やスイミングスクールなどが対象から外れていました。雇用する際のスクリーニングの必要性を求める声はそうした業界からも上がっており、範囲を拡大する必要があります。

第二に、どのような犯罪を対象にするかという問題です。有罪判決を受けた場合はもちろん対象となりますが、不起訴の場合にどのように取り扱うべきか。例えば起訴猶予の場合は、実際に犯罪行為があったが可罰性の観点から起訴に至らないケースです。私はこれも含めるべきだと考えます。悩ましいのは、起訴はされたが事実認定が行われていない場合などです。冤罪のリスクもあり、このあたりは悩ましい問題です。行政上の処分の場合は不服申し立ての手続きの有無など複雑な問題が存在しますが、そうした事案があったことを雇用主が確認できる制度を確立すべきだと私は思います。他方、採用に係る者以外の第三者はこうした個人情報にアクセスできない制度を構築することで、性犯罪歴のある者の人権に対する配慮は必要です。

この瞬間も子どもたちに対する卑劣な犯罪がこの国のどこかで起こっている可能性があります。それを考えると、残された論点を早急にクリアーして、日本版DBS制度をできる限り早急に創設することで子どもたちを守らなければなりません。


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