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森のカフェ

冬枯れの森は気持ちいい。
冷たい空気が気持ちいい。
踏みしめる落ち葉が気持ちいい。
木々の間から垣間見える清流がいい。
木々の間から垣間見える頂が白くなった岩峰の山々がいい。
冬枯れの木に落葉しそこなった蔦類の数枚の葉が黄色く輝いているのがいい。
冬枯れの森の中から見上げる狭い空が抜けるように青いのがいい。
冬枯れの森は気持ちがいい。

ふと立ち止まると、寒さが身に染みる。
ふと立ち止まると木々の向こうから水の音がする。
ふと立ち止まると、空気が張り詰めている。
冬枯れの木から残っていた葉がはらはらと落ちてくる。
地に敷き詰められた枯葉の上に小さな音を立てて落ちる。
そんな音までが張り詰めた冷気に響くような気がする。

体が冷えてきて、森の中のカフェに駆け込み、温かいコーヒーを。
コーヒーが胃を刺激して、ホットドッグを。
ホットドッグが胃を刺激して、カレーライスを。

暖まった体、膨らんだ腹、温かいカフェ。
窓から見る森の景色が、違って見える。
夢の中にいるかのよう。

カフェのドアを開け一歩外に出ると、現実に引き戻される。

冬枯れの森は……寒い。

※写真は2018年11月、上高地にて