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Episode 74 今と言ったら今なのです。

「蕎麦屋の出前」って言葉があります。
「今出ました!」って、適当な返事をするという意味でつかわれる表現ですが、私はものすごくこの感覚が苦手です。

家から約2kmの近所の蕎麦屋、出前バイクなら10分かからない…。
遅い、遅すぎる!
30分経っても2km進めないバイクって、どんなバイクだ?
そんな感じでしょうか。

「さっき起きたところ…今から行くね!」
パートナーと付き合っていたころに、私のアパートに来てもらう約束をしたことがあります。
でも、待てど暮らせど彼女は現れない…。
国武万里の名曲「ポケベルが鳴らなくて」がヒットしていたころの話です。
家を出てからの通信手段が乏しくて…。
「おかしい、どうしたんだろう」…彼女の自宅からここまで、ゆっくりでも30分はかからない。
焦れる気持ちでポケベル発信、しばらくして「今から行くね」と返信。
えぇ?電話から1時間経ってますけど…。

その日のデートは最悪でした。
悲しい思いをして彼女を帰ったのだと思います。

彼女はきっと頑張ってくれていたんだと思うんです…後から思えば。
せっかく会うのだからって、色々考えて支度をしてくれていたんだと思うのです…きっと。
厳密に言えば「今から支度していくね!」だったのです。
考えてみれば、さっき起きた「起き抜けスッピン」で、そのまま彼のところに行くわけもなく…。

一方で、私の時間管理は自分を守るために編み出した方法で、全ては「理詰め」です
工程表からの引き算で出来上がっていますから、いまどこで何が起きているのかは全て管理内の話です。
だから、私の「今」の感覚は「right now」の一点のみなのです。
ここに発生する差は大きい…。

私の方は「彼女抜き」で当日の予定をアレコレと工程表の中に放り込んでいるワケです。
もちろん、それは「彼女を喜ばせるため」だったわけですが…。

「今」という言葉の持つアバウトな感じは、私を混乱させます。
時と場合によって今の長さが変わることに私の理解が追い付かないのです。

工程管理された自分の感覚を乱す「今」の存在が、私の人との係わり方を象徴する「鍵」になることだと理解できたのは、それからだいぶ歳をとってからのことです。

旧ブログ アーカイブ 2018/11/27

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