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オバはん、赤いランドセルの男の子に会う

オバはんはリハビリも進み、日々歩行練習に励む。
だが、今でも段差に注意して歩く。
後ろから追い抜いていく自転車に身がすくむ。


気をつけてね

その日、視線の先には、小学生の楽しそうな下校集団。
3、4年生かな、5人くらいがこっちに向かってくる。
集団は絶対まっすぐ歩かない。
クネクネと曲線を描いて進んでくる。
時々小走りになって、お互いぶつかったりする。

ぶつかったら大笑いする。
袋なども持っていて、それをぶんぶんふり回す。

オバはんはだんだん迫ってくる集団をどう避けるか、考えた。
そうだ! お祭りの神輿が来たと思えばいい。
道の端にゆっくり移動して立ち止まった。

子ども神輿が近づいてきた。

その時、神輿の中に真っ赤なランドセルを見た。

その赤いランドセルの持ち主は男の子だった。大切に使っているのだろう。手入れされた鮮やかな赤。

その男の子に「赤いランドセルで何が悪い!」というような気負いは微塵もなく、周りの子どもたちも「普通のこと」として特別視しない様子。

「男の子は黒、女の子は赤」という時代は終わったのだ。
やっと終わったかとオバはんは思った。

何か、問題でも?

オバはんは小学生の時、授業に使う裁縫箱を買うのに希望の色を提出したことを思い出す。2色から選ぶ。
小学生オバはんは見本を見て「黄緑色」を選んだ。

数日後、裁縫箱が配られ、オバはんを除いて、女の子はみんな「ピンク」を選んでいたことが判明。男の子は「黄緑」。
小学生オバはんが自分に与えられた綺麗な「黄緑色」にうっとりしていた時、「えーっ!!!」というクラスの大合唱。
「黄緑は男の色だよ」という声も。

その瞬間、小学生オバはんは、黄緑色を選んだことを激しく後悔した。
好きで選んだ黄緑色。下を向き、固まる。
「ピンクにしとけばよかった。女の子なんだから」と本気で思った。

その時の先生の一言を今も忘れない。
40代くらいの女性担任教師。
「みなさーん、ちょっと聞いて。先生は女の人だけど、黄緑色も好きです」

その一言で小学生オバはんがどれほど救われたことか。

大人の一言は、子どもの宝物にもなるし、傷にもなる。
それが何十年も子どもの心に残ることを、親も先生も、そして世の大人たちも本当は知ってるよね。
だって、大人はみんな昔「子どもだった」んだから。

カーテンを開けよう!



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