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不動産から見るシンガポールの発展

シンガポールの一番大きな不動産会社はどこでしょう?
答え:シンガポール政府

その理由は、HDB (Housing Development Board:公営住宅)制度にあります。
シンガポールの持ち家率は、人口9割。(日本:4割)
そして、その8割がHDB所有です。

1965年、マレーシアからの分離独立が決まり、涙を探すリー・クワン・ユー氏

マレーシアの一部であったシンガポールは、イギリス植民地からの開放後、マレーシア人を中心とする政権と衝突し、追放される形で独立しました。

シンガポールHDBとは?

東京23区ほどの面積しかないシンガポールは、エネルギー資源どころか、当時のシンガポールは経済力は元より十分な住まいやインフラ、真水さえない状況でした。資源がない社会において、能力を最大限生かすことにエネルギーを集中投資しなければ生き残れない。国民が仕事に集中しパフォーマンスを維持するには、安定した住環境が最重要と考えました。そして、国が無理のないローンを提供し、国民が公営住宅を所有する制度としてHDBが始まりました。

The Pinnacle - HDB in Tanjong Pagar

HDBは、購入5年後には売買できるため、自分の資産として大切に保有管理し、売却時に利益が出るように改装するなど、自然と価値を高めることに努めます。また、家族(両親や親族)の近くに住むことで、金利優遇を受けられたりする特典を設けることで、家族が結束する環境を作っています。そして、多民族国家であるシンガポールらしく、HDB内で多様なコミュニティーが形成されるように民族分布を決め、特定の民族が固まらないようにすることで社会性を構築することに成功しました。

日本の公営住宅

は、賃貸団地です。賃貸は、自分のものではないので管理も疎かになり、不動産として資産価値が下がり続ける一方です。

日本住宅公団(現:UR都市再生機構)

日本の不動産に必要なこと

建物は、長期計画に基づいた管理と修繕が価値を維持していくために重要です。また、その価値を向上するためには、定期的に最新設備を整えたり改修工事することで需要を保ち収益を向上することが健全な資産活用利用に繋がります。

日本の不動産は、ほぼ民間デベロッパーが主導しており、建築の質は世界基準ですが、建てた後の管理体制が整っていません。大きな理由は、開発後の管理がデベロッパーが委託した別会社の責任になっているためです。近年、問題となっている長期修繕積立金の不足もこのような背景が原因です。

不動産は、本来、長期的な維持管理及び向上を目的とする開発であるべきです。