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マッドパーティードブキュア 223

「話を戻しましょう。このコップを見てください」
 セエジはメンチたちの方にコップを差し出した。その表面にはまだ泡が残っていてくるくると回っている。
「この泡と飲み物が接している部分があるでしょう? 『ドブヶ丘の心臓』や、女神様の持っていた袋のようなものというのは、ここのようなものなのです」
「境目ってことでやすか?」
「そうです」
 セエジが頷く。
「あるいは破れ目、もしくは結節点ということもできるかもしれません。この混沌の世界が」
 セエジはフォークの先でコップの中の液体を指し、それから泡の根元にフォークの先を向けた。
「こちらの世界と接するところ、それが何らかの形を持って現れることがあります」
「それが『ドブヶ丘の心臓』だって言いたいのか」
「ええ、そうです」
 メンチの言葉に、セエジは深く頷く。
「そして、同じく結節点より生じた女神の袋に由来を持つメンチさんの斧にその力が宿った。今の状態はそのような状態ではないかと思います」
 セエジはメンチの斧に目線を送りながら言った。メンチは斧の柄をぎゅっと握った。掌の中の斧は今までよりもどこかよそよそしく感じられた。
 別の世界の力を宿している? 思い出す。『ドブヶ丘の心臓』の中であったことを。そこで出会った存在。確かにあの世界は、あそこにいた存在は何か異質な感じがあった。斧の中に潜んでいる力そのものも。
「それで、この力を使えば、テツノをなおせるのか?」
「実はそれは難しいのです」
「どういうことだよ」
「『ドブヶ丘の心臓』の力はこの世界に顕現するにあたって、一つの形に収束してしまいました。その斧の形です」
「ああ」
「そして、その斧を扱えるのは現在メンチさんだけです」
 そこでセエジは短く黙り込んだ。
「言いにくいのですが、メンチさんはそう言った方向に力を使うのは向いていないようです」
「じゃあどうするんだよ」
 セエジは指を一本たてて言った。
「一つだけ方法があります」

【つづく】
 

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