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マッドパーティードブキュア 224

「他の結節点を探すのです」
 神妙な顔でセエジは言った。
「それは……どういうことでやすか?」
「確定してしまったメンチさんの斧から、望むように力を引き出すことは難しいです。ならば、他の場所から混沌の世界の力を引き出した方が手っ取り早く手に入れられます」
「でも、そんな混沌の破れ目なんてそうそうあるわけじゃないでやしょう?」
「何を言っているのですか」
 セエジは、女神に目をやって続ける。
「我々はもうすでに破れ目の一つを知っているではないですか」
「わたし?」
 女神が首を傾げる。なにも思いついていないようだ。
「女神様の持っていたという袋ですよ」
「でも、あれは」
「今、その袋はどこにあるのですか?」
 女神は首を振って答えた。
「わたしはあの袋を最後に使った後、すぐに聖黄金律教会の人に襲われたからわからないよ」
「あたしもあの袋がどうなったかは知らねえな」
 メンチも首を振って答える。あの袋がそれほど重要なものだとは思っていなかった。唯の女神のガラクタ入れだと思っていた。
「なるほど、しかし、教会のアジトでも見た覚えはありませんね」
「ラゲドの野郎が、こっそり持ってるって可能性はないでやすか?」
「それは考えにくいです。聖黄金律教会では鹵獲したものの情報はすべて共有されます。隠し持つということは戒律の面から言うとかなり難しいでしょう」
「となると」
「まだ、女神様の棲家に置かれたままになっている可能性が高いのではないでしょうか」
 セエジは女神に目線を向けながら言った。女神は顔を曇らせて、目線をテーブルの上に落とした。
「女神さん」
 メンチは座る女神が小さく震えているのに気がついた。
「わたし、もうあそこに戻りたくない」
 小さく、女神が呟く。
「でも、ですね、女神さん」
「むりだよ、わたしは」
 女神の声は震えている。テツノは困ったように見返してくるのが目に入る。
「あたしが行くよ」
 メンチは女神の肩をさすりながら言った。

【つづく】

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