見出し画像

リカレント教育を展開する企業は、ライバルではなく仲間。企業とつながり開拓する、これからのリカレント教育。

オンライン環境が急速に整ってきたからでしょうか、ここ数年、大学だけでなく民間でも社会人に向けて学びの機会を提供する取り組みが急に増えてきたように思います。民間が本気になるとサービスを拡充させるスピード感がすごく、たとえばコロナ禍以降のNews Picksの動きなんかを見ているとリカレント教育業界に黒船がやってきた!と、かなりドキドキしました。

今回、紹介したいのは、そんな民間の取り組みと大学とがコラボしためずらしい試みです。民間は実業家として有名な堀江貴文さんが主催する会員制サロン「堀江貴文イノベーション大学校(HIU)」、コラボ先の大学は名城大学です。

リカレント教育の取り組みで、大学と企業がコラボ

この取り組みがどういうものかというと、名城大学のナゴヤドーム前キャンパスを会場に、HIUが1日限定のオープンカレッジ、「HIUローカルアカデミーin名古屋」を開催するというもの。もうちょっと説明すると、堀江貴文さんはじめ、さまざまな分野のエキスパートたちが複数の講座と講演を実施する催しです。一般は有料ですが、名城大学の学生たちは無料で聴講できるようです。

このリリースを目にして、まず大学とこういった民間の取り組みが手を組むことに驚きました。というのも、これは私の勝手な思い込みなんですが、大学は民間の教育コンテンツのことを、どこかで目の敵にしているんじゃないかと思っていたからです。高等教育機関としての自負もあるだろうし、自分たちの聖域に侵略してくるような、そういう印象も持っているのかなと。実際、いち研究者が民間のセミナーや講座に登壇するのはよく見かけるものの、大学として関わるというのはめずらしいように思います。

今回の取り組みは厳密にいうと、両者が連携してリカレント教育のイベントを実施したわけではなく、名城大学がHIUをサポートし、代わりにHIUが名城大学の学生に学びの機会を提供している、というものになります。とはいえ、ここからさらに発展させていき、リカレント教育をテーマにした企業と大学がコラボをすると、お互いにとってよりよい関係がつくれるのではないかと感じました。

まず企業側からすると、大学のキャンパスというリアルでイベントができる場はすごく魅力的です。将来的に顧客になる可能性がある学生たちと接点を持てることもメリットでしょう。さらに、今回の取り組みでは登壇はないようですが、大学の研究者もイベントを充実させる魅力的なリソースになるように思います。

一方、大学側は、著名人や有名企業とコラボをすることで、日頃はリーチしない人たちに大学に来てもらえるし、話題づくりの一環になります。また、企業によるリカレント教育は、普段の大学の授業とは毛色が違うので、学生の学びの場としても意義深いはずです。さらに今回だと20もの講座を開講する、つまり20名ちかく学外の専門家たちが大学にやってくるわけで、こういう人たちと学生や教員がイベント後に交流できるなら、人脈形成という意味でもうま味があるように思います。

さらに、です。もっとそもそものところなのですが、これだけ社会が複雑化してくると、何かについて深くアプローチする(=その分野の知識を本当に欲している社会人を満足させる)には、ビジネスとアカデミア、両方の視点が自ずと必要になってくるように思うのです。月並みな例ではありますが、AIのビジネス活用について伝えるなら、ビジネスにおける活用事例はもちろんですが、原理の説明や今後どう進化していくのかというアカデミアの最新情報や展望も必要だと思います。

リカレント教育を拡げるために、大学がやるべきこと

ビジネスパーソン向けのリカレント教育に注力する企業や大学が増えてきているものの、この分野に明らかに成功している大学や企業がまだないのは、日本の雇用形態や企業文化と学び直しの相性が致命的に悪いからだと、私は思っています。ここらへんについては、以前noteでもいくつか書きました。でもそうはいっても、二十歳前後のときに蓄えた知識で一生やっていけるわけはなく、学び直しや学び続けることは、今もそうですが、今後さらに必要になっていくことは明白です。

社会人が学びやすいように(もしくは学ぶことに明確なメリットを感じられるように)労働環境を根本から変える必要があるものの、それは一朝一夕ではできないうえ、大学よりも国や企業のマターになります。大学がやるべきことは、そういった変化に関わりつつも、並行してより魅力的なコンテンツをつくるためのチャレンジを続けていくことではないかと思っています。そのための試みの一つとして、リカレント教育に取り組む企業と大学が手を組むというのは、やってみる価値は十分にあるのではないでしょうか。今回、名城大学のリリースを読んで、そんな可能性をじんわり感じ取ることができました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?