疑問点はないです(大嘘)

文献講読の授業、俺は論文の報告を無事に終えることができた。
どんなことをやるのかっていうと、

・指定された論文を読み
・論文がどんな内容かを箇条書き形式でまとめ
・論文の評価する点と、疑問点・論点を書き
・他の生徒からの質疑応答をする

というもんだ。これがまあ大変だった訳よ。論文を読んで評価や疑問に思うものを挙げる、これがキツい。

とりあえず一読する。日本語だし、なんとなァく意味は取れる。読む支障となる、わからない用語なりなんなりをネットで軽く調べる。

こうしてとりあえず読んだ。出てくる感想は

「ふーん、なるほどね」

この程度だ。無味乾燥タクラマカン砂漠。パッサパサの感想しか出てこない。

一度は(読んで)理解した(つもり)
というキン肉マン読みなのだ。
ああ頭に知識がなければ 疑問や評価すらないのさ
ってわけだ。

以前俺が、石黒圭『「読む」技術』、西林克彦『わかったつもり』
という本を読んで感想なりを書いた。そこで述べられていたのは「スキーマ」という考えだ。

昔、ある所に老夫婦が住んでいた。老婆はある日洗濯中に果物を拾い、それを切ると中には子供がいた。その子は瞬く間に成長し、ある日のこと、悪を成敗することを決意した。老夫婦はそれを応援し、餞別に団子を持たせ、子供は出立したのである...

この文を読んで、「ああ、あの話ね」思った?スキーマってのは、言ってしまえば予備知識だ。予備知識、事前知識があるからこそ、話がわかりやすくなったり、その後の展開が推測できたりする。

上の文章が続いてったら、なんか動物とか仲間にしそうじゃね?それがスキーマだ。

論文の話にもどる。

ワオさんは近世のゼミなんで、近世についての論文を読む。「文書社会」や「村秩序」のような、広いテーマについて、「蔵書」だの「役」だの「詫証文」だの、小さいテーマから分析をするのが論文だ。

当然論文なんだから、用語がムズい。
「小前層」ってなんや?→調べる
「質地受け戻し慣行」?→調べる
調べる調べる調べる・・・

読み終わった。
脳内の敵「で、疑問点は?」
ワオキツネザル「...」

スキーマが働かないのだ。
「当然である」
脳内のキートン山田。

分野についての基礎知識、論文で要求される基礎知識というのは、高校日本史ではもはや足りない。

ここに、歴史が好き「だった」という人が出てくる原因があると思う。他の分野でも似た境遇の人もいるかな?

「調べた、なのにわからない」

この矛盾に突き当たる。そこで挫折し立ち止まってしまう。ではどうするか。他の本を読むのがいい。

俺が読んだ論文は何年も、下手すりゃ数十年も前のもので先行研究は当然ある。その先行研究がキモ。論文を理解するには論文注の文献を読むといい。そして、同じ著者の本や論文(同内容の研究をやってたり!)、同内容の本や同年代の論文(流行り廃りがあるらしい)を探す。探すときはぜひ大学図書館、神。高い学費払っといて使わないのはパカだ、パカ!
挙げられてるものを何個か読めば、論文の理解が進む。もちろん、そこで挙げられている本を読んでも理解できないこともある。そんな時には(歴史の場合は)岩波講座や、研究史をみてみるのもアリだ。

したども時間が無い。

そうなったら流し読みでいい。気になった所、関連がありそうなところを見つけたら、そこを注意深く読めばいい。


俺はこれで文献講読を切り抜けられた。
まとめると、

・注の文献(とくに先行研究)をたどる
・関連ワードを検索かけたりで、同じ著者や同内容の本を探す、読む
・皆目検討ツカンジナビア半島の奴は、該当分野の通史や研究史を読む

こうしていくうち、自分の担当する論文テーマについて、なんとなくだけどスキーマが形作られる。また、他の本を、とくに別著者のものを読むと、テーマについて異なる意見を述べてることがある。別視点getだ!

そんなこんなで、予備知識ができあがるから、疑問点や評価点はその知識を参照することでエゲつなく取り組みやすくなるって訳だ。



あと、発表終わったら自分を労うのはマジ大事。俺は当日エキュートのケーキ屋行ったし、週末に美術館と喫茶店行った。 
QOLぶち上がる。

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