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【感想】大渕憲一「謝罪の研究」を読んだぞ!!!!

「日本人はすぐに謝る」

——こんな言葉を聞いた人は多いのではないだろうか。生まれて20年、人並みだがそれなりの経験を積み、語彙力を培った俺は、これに対してある言葉が連想された。「ステレオタイプ」だ。
 私は当然のごとく、覚えた言葉をすぐ使いたがる病を発症したのである。「〇〇(人/というもの)は~」←オッ、ステレオタイプゥ―!!
何かを一括りにする文を見つければついついこの言葉に当てはめてしまう。

そこで出会ったこの本。俺がこの本を読むきっかけは、授業で行う論文報告のための、材料集めの一環であった。

【要旨】
 謝罪に含まれる要素は、①負事象の認知②責任受容③悔悛表明④被害者のいたわり⑤更生の誓い⑥赦しを請う、というものだ。この中で②③が必須とされる。この要素が盛り込まれればその分丁寧な謝罪に受け取られる。
 謝罪とは、釈明の一つのタイプであり、他には弁解・正当化・否認がある。被害が起きた行為に自らが関わり(⇔否認)、そのうえで不当と認め(⇔正当化)、また責任は自分にある(⇔弁解)とするときに、謝罪を行うのだ。
 日米の調査によって、日本人とアメリカ人は、釈明のために謝罪を選択することに最も高い評価を下すことは共通するが、アメリカ人は弁解や正当化することにも高い評価を下すことという違いが明らかとなった。日本は集団的社会であり、人に受け入れられることに価値を置き、無難な選択として謝罪が使用されると述べる。
 また、日本の謝罪傾向は釈明指導、教育の影響も示唆されている。葛藤の解決として、謝罪することを評価することが、価値観の形成にも影響しているのだとする。

【感想】
 (冒頭の続き)この本を初めて見たときは「〇〇人は~」という典型的な、アレな本かと思ったのだ。事実、図書館でこの『謝罪の研究』があった社会心理学の棚をみていると、どうもその、アレな本というか、どうも偏見っぽい本があちこちにみられたのだ。この本を読むと、はっとさせられた。何でもかんでも「ステレオタイプ」や偏見という枠組みに押し込んでいた、俺自身というものを気づかされた。調査に裏付けされた、謝罪などの釈明傾向の分析で、日米の違いを明らかにしていたことは、大変説得力がある。俺がどうやら短絡的に考えるきらいがあると、この本を通じて気づいた。文化、お国柄などという言葉は気を付けなければ変な理解を生んでしまうのかもしれない。

 俺自身の超個人的な感想を述べる。この本はえげつねえくらい面倒な文献購読という授業の、報告のための材料探しとして読んだ。読む動機は外発的だけど、読んでみるとこれまた面白く、意外な出会いを提供してくれた文献購読に憎しみ半分、感謝半分という複雑な気持ちだ。まだ発表していないのでクッソ不安だ。謝罪というきわめて身近な行為について、理論や調査に基づいて分析すると、謝罪の要素、理由、効果がよくわかる。また、弁明、正当化、否認という別の釈明にも言及しているから、よりいっそう謝罪について理解が得られるのだ。

【今回紹介した本】
大渕憲一『謝罪の研究:釈明の心理とはたらき』(東北大学出版会、2010年)

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