見出し画像

死ぬより辛いこと。人間として生まれて何が一番辛いかと言えば、私は自分を人間として認めてもらえないことだ。

私が子供の頃、お婆ちゃんがよく言っていた、
「お金をさわったら、必ず手を洗うんやよ。お金は、どんな人でもさわるから」
どんな人って?
父も言っていた、
「銭湯に行ったら風呂場のいすを熱いお湯で洗うんや」
どうして?・・・
このわけを教えてもらったのは小学校の5年生か6年生だった。
一つの理由は梅毒や淋病の性病、もう一つは、らい病だった。
今、新聞やテレビのニュース等で訴訟が、話題になっているハンセン病とは別名、らい病である。
ざーっと、家庭の医学などで調べた。ハンセン病は、現在では特効薬が開発され100%治る病気であること。
他の病気にかかって、極めて免疫力が弱っているときに感染する。
この日本でも、極めて貧しい人々が多数存在した時代にはハンセン病は存在していた。
今の日本では、せいぜい年間10人だそうだ。
しかし、長く病気の原因が分からなかったことや、知覚や神経が麻痺し顔や身体が溶けたように醜くなることから昔から大変恐れらていた。
前世の悪行の報いなどと言われたこともある。
その結果、ハンセン病の患者たちは、隔離され社会から葬られた。
患者たちは、親の墓参りをすることも、故郷に帰ることもできないで
多くの方々は現在老人になっている。
本当は何十年も前に完治しているのに。
私は父やお婆ちゃんから、わけを聞いた直後に、たまたま中国の古い映画を見た。
その映画の中で、ハンセン病に犯され山奥に一人で住むオジサンは、道に迷って倒れていた少年を助けた。
オジサンと少年との別れの場面が今も頭に残っている、
「ワシは、こんな醜い病人だが、この病気は感染しないらしい。信じてくれるなら握手してくれんか」
おじさんは、指がただれて小さくなった手を差し出した。
丸顔の少年は、満面の笑みで両手を差し出し、オジサンの手を包みこんだ
「おじさんの病気が早く治ることを祈ってます」
この少年の名前は、たしか周恩来と言っていた。
人間として生まれて何が一番辛いかと言えば、私は自分を人間として認めてもらえないことだ。
何も悪いことはしていないのに。
ただ、貧乏な衛生状態の悪い環境に生まれ育ったがために、たまたま身体が弱かったがために、病に冒され、その病が、たまたま偏見の目で見られる病だったために。
死ぬより辛い傷を負った人を癒せるのは、優しく包み込むような愛しかありえない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?