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英語なまりのコージ(7)君の瞳に乾杯 彼女ができたぞ 

身長175センチで体重100キロ旧型人工知能コージが昭和の時代にタイムスリップしていた頃の話の続きです。
コージは太っていて、あまりにも強烈な個性と英語訛りの持ち主ですので、
彼女はできにくかったのですが、実は、彼女がいた時がありました。
運動会で大活躍をおさめてコージは一躍アルバイト先の人気者になりました。
江戸時代からあるといわれる古い繊維問屋の倉庫番で、しかも時給750円のアルバイトがこれほどまでに脚光を浴びたことは絶対になかったでしょう。
まさしく歴史的な事件でした。
すぐ、いい気になるコージは、アルバイト先でおそれ多くも社員のみなさん相手に
「へイ、英会話教室しますから来ませんか」
と声をかけ始めたのです。
そこで誰も集まらなければ良かったのですが5人ほどカモ?が集まったそうです。
この会社には香港とニューヨークに支店があったらしいのです。
その海外支店勤務に憧れた男性4人と女性1人が集まったわけです。
支店といってもマンションの一室だと思います。
老舗のボンボン社長がやる見栄ってヤツです、きっと。
この話を聞いた下宿”ほうれんそう”のみんなは
「また、いい気になって大騒動起こしてクビになるんだから・・・」
と夜のコークハイでのパーティで笑い話のネタにしておりました。
コークハイとは、酎ハイを買う金もない貧乏学生が一番安いウイスキーを
コカコーラやペプシで割って飲んだ。
体質的に悪酔いする人もいますので真似するときは胃薬を用意すること。
コージも単純ですが馬鹿ではありませんので”ほうれんそう”のみんなの忠告を聞いて最初はおとなしくやっていましたが・・・次第に本性が出てきまして
「朝6時に起床し基礎英語・続基礎英語・英会話のラジオ講座御三家を毎日聞きなさーい・・・アーンド、毎日1回は古典的名作カサブランカのボギーのセリフを英語で唱えなさーい・・・間違っても、”君の瞳に乾杯”なんて言ってスナックのお姉ちゃんを口説いてはいけませーん」
なんて独特の語尾を上げる英語訛りの発音で自分と同じタイムスケジュールを偉そうに強要し始めたものですから、一人抜け二人抜け・・・その上、
「彼らは卑怯者でーす。彼らには情熱がありませーん」
と仕事中にも昼休みにも叫ぶものですから、またもや人間関係が悪くなっていました。
しかし、不思議なことにヨウコさんという当時29歳の女性だけが熱心にコージのレッスンを受けていました。
つまり個人教授です。
コージが25歳の時ですから、4歳年上ということになります。
ヨウコさんは、”ほうれんそう”のコージの部屋にも何度か来ておりました。
そうですね、不二家のミルキーのペコちゃんをあのまま29歳にしたような女性でした。
コージの強烈な個性の虜になってしまった
ヨウコさんは、毎日、いじらしいではありませんか!
弁当を作ってコージに届けてくれたそうです。
ちなみに社内ではヨウコさんは勤続10年の主任さんでした。
部下も3人いました。
その部下のアルバイトがコージですからヌケヌケと上司の上司にお弁当を作ってもらっていたことになります。
この二人の甘い英会話の個人授業は1年半続くことになります。
よかったねえ。
しかし、この件で、コージに対して不満があります。
許せないことです。
それは、口説き文句が「君の瞳に乾杯」そうです、「Here's looking at you, kid」と使われていた言葉ですね。

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