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イールドワークで学ぶ空間身体学 第9回 実践編 「間」(Ma)を見つける 03

「言っていることや方法は正しいのになぜしっくりこない」

普段生活するなかでそんなことを感じたことはありませんか?

それとは逆に、

「理由はないけれどこの人といると安心できる」

ということもあるのではないでしょうか?

その理由は、私たちの身体が無意識のうちに相手や自分がいる環境に対して常にアンテナを張り、そこが自分にとって安全で「身を委ねられるか」を判断しているからです。

この「身を委ねる」という行動は「イールド」と呼ばれ、私たちは生まれた瞬間から身に備わったこの能力を使って積極的に安心できる相手や場所を選んで生き抜いています。

この連載ではこの能力「イールド」を知るとともに、上手にそれを使って自分を安心させたり、他人をリラックスさせたりする方法を、イールドワークの第一人者である田畑浩良さんにご紹介いただきます。アシスタントはイールドの達人(?)である猫を代表してニャンコ先生です。

連載 安心感と自己調整能力の鍵は「間合い」

イールドワークで学ぶ空間身体学

第9回 実践編 「間」(Ma)を見つける 03:施術者自身の在り方を探究する

文●田畑浩良
取材協力●半澤絹子

からだの自己調整力を引き出すボディワークである「イールドワーク」。

クライアントの内発的な力を引き出すには、場をつくり、相手と共鳴する施術者の状態がどうであるかが要となります。

この技法は、その人にとっての在り方を追究するための具体的な方法を含んでいて、施術者に限らず、すべての人の助けになるものです。

「心地よい自分を追求するとどうなるか?」

自分自身やご家族、ご友人とぜひ実践してみてください。

施術者自身の在り方①〜安全安心を確保する

前の回では、クライアントの自己調整力を起動させるために、空間/場の安全を高める必要性について述べてきました。

おさらいをすると、「クライアントの身体の足場」としてのタッチは、身体がその場に落ち着きゆだねられていく動きを促します。そして、その動き自体が身体システムを安心させることにつながります。

安全・安心という感覚は、イールドという動きによってembody(体現)されるのです。

イールドが起こると、全身の張力バランスがまずリセットされ、身体もゆるまる方向に向かいます。ここで大切なことは、「身体システムが安全だと認識すること」と、「イールドの動きが一致していること」です。安全を確認できていない段階でイールドを起こすことは危険だからです。

身体にとって、ゆるむことが常にいい変化だというわけではありません。

状況に応じて、安全と認識した分だけイールドを起こすことが正常と仮定するなら、ワークの手順として、施術者とクライアントはちょうどいい間合いとなる位置関係を見つけてから、安全な感覚を共有して、身体システムが十分安全・安心な感覚を認識した後、イールドを促すという順番になります。

身体が安全を認識する前に、せっかちに身体をゆるめることを強いてしまうと、危機管理の点で、都合の悪いパターンをつくってしまうことになります。身体が健全に機能するためには、安全確認もせずに警戒体制を解くべきではないのです。

緊張をゆるめていいか、イールドを開始していいかは、身体側が手綱を放さずに、常に主導する立場にあります。受け手の自己調整を円滑に適切なペースで進めるためにも重要なことです。

施術者自身の在り方②〜クライアントと対等でいる

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