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誰得ドット絵メイキング『人を殺せない本』

「なんだよ、人を殺せない本って」「本は普通、人を殺せない」と思うかもしれませんが、さてどうでしょう。本当にそうでしょうか?

分厚い本を「鈍器」と呼ぶような冗談はさておくにしても、いわゆるネトウヨのみなさんが大好きな"ヘイト本"なんかは間接的に人を殺しますからね。

今年は「ルフィ」を名乗る特殊詐欺犯らのグループが逮捕されて話題になりましたが、彼らはその名に反して卑劣なことに、高齢者を狙った強盗事件をも繰り返していました。

「名が体を表さない」のはよくあることですけどね。『1984』の真理省が歴史を書き換え事実を消し去るように、現実でも「国防省」を名乗る戦争屋はあとを絶ちませんし、日本でも財務省が国民を困窮させ、経産省は産業の衰退を招き……。

「ルフィ」を名乗る男らのグループは海外などから指示するだけで実行犯は「闇バイト」に釣られた人たちでした。もしもヘイト本やSNSでの宣伝として繰り広げられる高齢者ヘイトの影響がなければ、実行犯のなり手が少なくなったり、せめて「ためらい」だけでも生じれば奪われる命は少なかったかもしれません。

間接的に事件の背後にいた者たちは決して裁かれない社会ではありますが、右肩ダダ下がりの出版業界には、自らの生き残りのためには人を喰らうことも厭わぬ妖怪のようなものが住みついていることを忘れてはいけないのです。

と、どうにか京極作品ぽい話題(妖怪)につなげたところで、今日は前回の誰得ドット絵『京極夏彦』のメイキングをおとどけします。

普通に「厚い本」を描いていく

なんだかんだと言ってはいますが、描くドット絵自体は「厚い本」です。ただ、あとあと表紙を描き込んで使えるものにしたいので、少し大きく32x32ドットで描いていくことにします。

手順①/②

手順①では、厚めの本をイメージした直方体を描きます。でも、これではペーパーバックと変わりありませんね。

そこで手順②では表紙に厚みがあることを強調するため、赤い表紙にさらに明色・暗色を加えて立体感をつけました。

手順③/④

さらに手順③では、ハードカバーの折り目の溝(左、閉じる側)を描き入れて「厚いぜ」というメッセージを盛り込みます。厚いぜ。

これで表紙は概ね整ったので、あとは白いページ部分にも「厚いぜ」感を出したいところ。

そこで手順④では、白いページ束に表紙の影を落とし、背表紙との境(左端)に複数のページ束(専門用語で言うと「折」)を接着した感じを描き加えています。

あとは、全体の色を見直したら『厚い本』のできあがり。

『厚い本』のできあがり。

表紙になにも書かれていないと、『日記帳』みたいにも見えますけどね。だから日記帳には鍵をかけるわけです(嘘)

人を殺せなくしよう

この『厚い本』は、まだ「会心の一撃」を出せば人を殺せそうなので、攻撃力を弱めていく必要がありそうです。

というわけで、キャンバスを縦に3倍に……したのはあまりにも長すぎた(前回参照)ので、1.5倍の48ドットにして本の厚みをずい、ずい、ずい、と増して振り回せないくらいにします。あと、色も京極作品らしく、落ち着いたものに塗り直します。

と、ここまで来てから「縦書きなんだから"右開き"にしなくては」ということに気付き、画像全体を左右反転させました。

あとは、表紙にタイトルの文字らしきものを描いて完成です!

なお、左右反転させたときに反転前の光源にあわせて明暗を左右逆に塗りなおそうかと思ったのですが、やめました。参考にした作品は白ページ束の側面(専門用語で言うと「小口」)が黒く塗られているため、その部分がちょうど暗色になっている状態そのままの方が都合がよかったのです。

講談社から刊行されている『姑獲鳥の夏』

白ページ束側面は、ドット絵では「なんか曲線が描かれている」程度にしか表現していませんが、実物は「黒く塗られていない白い紙の部分」が浮き彫りになって絵柄を構成しています。豪勢!

なお、今回京極夏彦さんのご著書をネタにさせてもらいましたが、もちろん本の内容はまったく「誰得」ではなく、ステキで「皆得」なものですからそこは誤解なきようにお願いします。

実は妻が京極夏彦作品の大ファンなもので先日新刊を買いに行くのに付き合ったところ、棚で異彩を放っている"とんでもない厚さの本"を見せられたのが今回ネタの発端です。もちろん我が家の本棚にもこれらの「厚手の本」が並んでいるのですが、どれもが厚いので今まで意外と気にならなかったわけです。

いまどきは「みんな忙しく、可処分時間がない」と、動画も短く、文章も短く、とコンパクトにまとめることが求められる傾向がありますが、京極作品はまったく気にしない様子が最高です。外形ではなく、中身が良いものこそが求められ、熱心なファンによって支えられている様子を見られることは、よい景色だなとつくづく思わされました。

書店では、思わず「なんじゃこりゃ」って言っちゃいましたけどね。

(おしまい)

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