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誰得ドット絵『ジョイカードMK.2』+高橋名人への謝罪文

7月15日でファミコン40周年だったらしいじゃないですか。そこで「よしきた!」と、以前描いたドット絵『ファミコンのコントローラー』を平面ではなく立体的に描き直すことにしたんです。

ただ、あまり大きくしてしまうと"ドット絵感"がなくなるので同じ32x32ドットとのキャンバスで描いてみたところ、コントローラーの丸みを出すのが難しくって。「このちょっと角張った感じ、ジョイカードみたいだな」と思ったのでジョイカードにしてみました。

もはや歴史の1ページとなったファミコンのことは若いみなさんもご存じだとは思いますが、「ジョイカード」までご存じの方は多くないかもしれません。ジョイカードというのはハドソン(当時)から発売されていた連射付きコントローラーのことで、正式名称は『ジョイカードMK.2』。

いま画像検索して写真で見ても角張った感じはしないのですが、ファミコン純正コントロラーよりも角張った手触りだった気がするんです。少し大きかったんだっけな~、そのせいかもしれません。

当時、ぼくらファミコンキッズはどれだけボタンを連射できるかを激しく競い合い、「定規を使うのが速い!」「いや、指でこするのが速い!」と言いながら指の皮がむけるまで連射競争をしていました。そのとき無茶をして指の皮がむけ、けっこうヤバイことになった傷跡は今でも視認できます。周囲よりちょっと綺麗な色をしているのは、ここだけ少し若いからでしょうか。

そんな連射バカだったぼくらのヒーローは、神器ジョイカードの発売元でもあるハドソンの高橋名人。伝説の「16連射」(1秒間に16回ボタンを押す)でもって、シューティングゲームで活躍されていたのです。

ぼくの場合は、腕を痙攣させそうなほどがんばって12連射が限界だったのを覚えています。友達のひとりに13か14いけるヤツがいたかな? という記憶。高橋名人の16連射は「絶対」的な存在でした。

高橋名人逮捕デマ

ところがある日、「高橋名人の連射は、コントローラー仕込んでいたバネによるもので、詐欺で警察に逮捕された」という噂を耳にします。

もちろん結果的にはただのデマでした。でも、ぼくは噂を信じました。

今なら「そんなことで逮捕されるわけがない、法律なめんな」などとごちゃごちゃうるさく言えますが、当時はそんな知識ありません。

「高橋名人は詐欺師、犯罪者」
「ハドソンのゲームなんて、もう買わない」

周囲の友達とそう言いあい、そして、本当にハドソンのゲームを買わなくなり、遊ばなくなりました。ハドソンならではの名移植作『ロードランナー』をあんなに愛していたにも関わらず。

結局、噂がデマだと知ったのは数年後のこと。シューティングゲームやアクションゲームが主流だった時代は終わり、RPGが主流になってからだったと思います。すでにゲームが上手な「名人」の存在が取り沙汰されることもほとんどなく、高橋名人にもハドソンにもすっかり関心を失ってからのことでした。

デマの影響がどれだけあったか、噂を耳にした皆がデマを信じたのかはわかりません。でも、すくなくともぼくの周囲には、「そんなわけない」「ただの噂だ」などと言う人はいませんでした。あんな噂がなければ、あるいは皆がそれを簡単に信じたりしなければ、ファミコン40年の歴史も今とは違うものになっていたかもしれません。

信じてしまった「高橋名人逮捕」の噂がデマだったことは、ぼくにとっては人生の重要な岐路になりました。根拠なく噂を信じ、ひとを疑い、ゲームカルチャーの枠内の話とはいえ世の中を歪ませることに手を貸したことを、今でも恥じています。このことが、のちのち情報の真偽に気をつかうきっかけになりました。

ところで、今もゲームの楽しさを伝えている高橋名人は、ツイッターやブログで時折当時の噂を「ネタ」にすることがあります。

高橋名人は「気にしてはいない」という様子ではあるのですが、その様子を見るにつけ、こちらは逆に胸が痛みます。

デマを信じたことへの罪滅ぼしは、同じようなことを繰り返さないこと、根拠のない噂を信じそうな人を見かけたら異論を挟むことだと思っていますが、やはりそれだけでは不十分なのでしょう。

高橋名人ごめんなさい。

今も親指に残る連射の傷跡が消える日が来たとしても、この罪のことは一生忘れないつもりです。

(終)

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