子宮頸がんとHPVワクチン

HPVとは?

HPVをご存じですか?ヒトパピローマウイルス(HPV)とは、性的接触のある女性であれば50%以上が生涯で一度は感染するとされている一般的なウイルスです。
このウイルスは、子宮頸がんの患者さんのほぼ100%で見つかり、HPVが長期にわたり感染することで子宮頸がんになるとされています。国立がん研究センターによると、HPVは年間10,000人程度の方が感染し、3,000人程度が亡くなっています。(1) また、HPVの感染はHPVワクチンと子宮頸がん検診で予防することができます。

HPV感染から子宮頸がんへ

子宮頸がんの原因はHPV感染によって引き起こされています。一般に子宮頸がんに進行するまでの期間は数年〜数十年と考えられています。
HPVの感染が持続すると、前がん病変(異形成)を経て、子宮頸がんに至ります。一般的に異形成(前がん病変)で自覚症状は現れませんが、子宮頸がん健診で見つけることができるとされています。

「HPV検査=陽性」とは、どんな状態?

HPVは多くの男女に感染するウイルスですが、ほとんどの場合症状は出ることがなく、子宮頸がんの発症はごく一部です。子宮頸がんの発症を予防するには、HPVワクチンを接種することが大切です。HPVワクチンはHPVウイルスの感染(16型、18型)を予防することができます。

ワクチン接種する疾患は、HPVの他に、麻疹、日本脳炎、ポリオなどがありますが、それぞれの感染症は対処療法のみで有効な治療法が存在せず、後遺症が重いものがほとんどです。そのため、これらの病気を予防する観点からワクチン接種はとても重要です。

日本の子宮頸がんと世界

日本では12〜16歳の女の子を対象にHPVワクチン接種がなされていましたが、ワクチン接種後に運動機能障害や疼痛などの症状があるとされ、予防接種対象者への積極的な勧奨が差し控えられました。
しかしその後ワクチン接種後に生じた症状との因果関係はないとし、安全性が認められました。そのため、2022年の4月からHPVワクチン接種を積極的に勧奨する取り組みが再度始まりました。
また、WHOは、2030年までにHPVワクチンの接種率90%を目標に掲げています。しかし、日本は先進国の中でもワクチン接種率(約0.3%)、健診率(約40%)とかなり低く、他の先進国よりも死亡率や発生率が高い状況が続いています。

下の図では、世界各国の15歳までのHPVワクチン接種率を表しています。
アイスランド、スペイン、イギリスなどでは8割を超えているのにも関わらず、日本の接種率は1%未満であることがわかります。(3)

図1 15歳までのHPVワクチン接種
世界銀行の2019年の所得水準に基づき、高所得国:赤 中所得国:青 低所得国:緑

HPVワクチンを接種することで、高いがんの予防効果があり、接種後は、10年以上の持続性が期待できるとされています。また、ワクチン接種により、抗体を持つ人が増えることで感染を押さえ集団免疫をつけることができます。

HPVワクチン接種により、子宮頸がんの原因であるHPVの感染を50〜70%防ぐことができるとされており、ワクチン接種により、子宮頸がんそのものを予防する効果があるとされています。(3)
ワクチンを接種し、子宮頸がんを予防することでより健康な日々を過ごしましょう!

[参考文献]
(1)国立がん研究センター がん情報サービス 人口10万対年齢階級別死亡率(子宮頚部2019年)
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/cancer/17_cervix_uteri.html
(2)Global Health & Medicine,2021 https://www.jstage.jst.go.jp/article/ghm/3/1/3_2020.01070/_pdf/-char/ja
(3)厚生労働省 HPVワクチンに関る情報提供資材 HPVワクチンに関するリーフレットhttps://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000901219.pdf


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