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からっぽ

言葉を交わさないという行為が、ここまで露骨に中身のない関係性を生み出すとは思っていなかった。

余計なことは言わないし、めんどうなことはしない。取り決めた訳でもないのに、いつのまにかそういうことになっている。
これが暗黙の了解というやつか。
そう思うと、自然とため息が出た。

別に嫌なわけではないけど。1番怖いのは、いつのまにか私がそれを自然と受け入れるようになったことだ。
そんな関係を辞めたくて、真正面からぶつかってみたこともあった。でも結局、のらりくらりと交わされて、都合の良い言葉を並べられるだけ。そうこうしてるうちに、私も変わった。

複雑なのは、からっぽでも、からっぽじゃないこと。そこに愛がなくても、何も無いわけではないこと。何の感情も持てない人と一緒にいないわけがない。とはいえ、そこに何か特別な気持ちもない。

この虚無感と違和感は何なのだろうか。

家族、友達、恋人。世の中にはいろいろな人間関係があるけど、名前のつく関係だからといって、愛せるわけじゃない。

またひとつ、知らなくてもいいことを知ってしまった。大人になっていく自分に嫌気がさす。

自分の好きな人が自分のことを好きになってくれる。そんな奇跡みたいなこと、一生のうちに何回起こるんだろうか。

今でも私は心のどこかで、白馬の王子様が迎えに来てくれるのを待っているのだ。そんな夢みたいなこと起こるはずもないけれど。

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