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昭和的護送船団方式がいよいよ使えなくなりつつある現代

話題が大きくかつ長くなりすぎて若干食傷気味の人もいるかも知れませんが、今回の吉本興業の問題は吉本興業だけの問題だけではなく、ジャニーズ事務所の圧力問題と根っこは同じでしょう。テレビ局などの放送産業と、タレントを供給する芸能事務所と、番組制作会社とで構成されるテレビメディア業界全体を牽引していた護送船団方式が時代にそぐわなくなってきた証なのかも知れません。

これはテレビ業界だけではなく、例えば出版業界は出版社・取次・卸・書店が一蓮托生だったはずですが、本が売れない時代になるのとほぼ同じタイミングでネット書店の脅威により、流通の上流から下流まで一様に打撃を受けました。力の無いところから潰れていき、また出版社が大手書店と直接取引したり、取次会社が独自の動きを見せたりと、かつての協力体制は競合・競争関係に変わりつつあります。

さらに言うと出版業界・テレビ業界といったメディア関連だけではなく、多分どの業界でもこれは同じで、むしろテレビや出版の業界の変化が遅かったくらいなのだと思います。人口ボーナスと産業構造の変化がもたらした高度経済成長期においては護送船団方式はみんながWinWinの関係になれて誰も傷つかない、非常に良く出来た方式だったのだと思います。特出して儲けたり巨大化するところがない代わりにみんなで揃って儲けましょうという非常に日本的な、ジャパンアズナンバーワンを体現するような仕組みでした。自動車産業におけるメーカーと下請け・孫請けや建設業界におけるゼネコン・中堅ゼネコン・下請け・孫請けといったものがその最たるものでした。

しかしバブル景気の崩壊以降、少子高齢化の影響と長期的なデフレに見舞われて、さらに人口減少社会に突入した今、かつての成功をもたらした方式は現在の失敗をもたらす方式になりました。最上流に位置するメーカー・ゼネコンは孫請けまで面倒を見ることは出来なくなり、ひたすらコストカットに走り堪えきれなくなった中流・下流の会社はどんどん潰れていきました。こうなると、仕組みを維持し続けるということは、誰かがどこかで大損することになり、護送船団ではなくなってしまいます。

かつての下請け・孫請け企業は上流の大企業だけではなく、独自技術を生かしてさらなる販路を見つけようと模索し、上流の大企業側もサプライチェーンを冗長化して安く調達するために海外に目を向けます。出版業界・テレビ業界の問題はこういった水平展開や海外への展開が他の業界に比べると動きが鈍いことかも知れません。

もちろん、業界全てが潰れることはないのでしょうけれど、他業界の後追いとして事態が推移していくのであれば、今後は、テレビ局・芸能事務所などの合併や廃業もこれからはおかしくない時代になるのではないでしょうか。

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