エルドアンが高金利を嫌いな理由

トルコの大統領選挙は接戦ながらも結局は現職のエルドアン大統領の勝利に終わりました。この結果、トルコの国政や経済政策などは多分大きな変化は無いということが確実視されています。

それでも、深刻なインフレと為替相場の対策のために、財務大臣と中央銀行総裁人事を行ったのですが、最後のところでエルドアン大統領自身がちゃぶ台ひっくり返しをやっちゃうので、どれだけ実効性があるんだろうかとは思っています。

インフレ対策としては、中央銀行が市中金利を高金利に操作することで収まる、ということがマクロ経済の鉄則ではあるのですが、ここでエルドアン大統領が出てきて、高金利政策を認めず、低金利を「命令」してきたからこそのこれまでの経済混乱の原因の一つになっています。

ではなぜ、エルドアン大統領は高金利を嫌うのかというと、国内企業への融資を増やして経済を活発化させたいから、輸出を増やすため、ということがといった理由を説明してはいます。本人自身が、「高金利が原因でインフレになっている」という意見を言い続けています。

誰が財務大臣・中央銀行総裁になっても低金利政策の継続は間違いないのでしょうけれど、この理由自体が「結果」であって、エルドアンが高金利を否定する根本的な理由は、彼自身がイスラム教の教義を重視する人であり、トルコ共和国で長く続いてた「世俗派」を否定するタイプの政治家であることが重要になってきます。

イスラム教の教義として、そもそも金貸しを否定します。正確には、金の貸し借りによる利子の発生を否定するのですが、利子というメリットが無ければ誰も金を貸したりしません。

ということで、イスラム金融における独特な制度によって、利子ではないですが実質的なマージン・配当を得ることによって、金を貸した側も利益を得るシステムが存在しています。

コーランに背かない形での金融スキームを、ムハンマド以降後年のイスラム法学者や政治家・経済官僚などが知恵を絞って生み出したのですが、非イスラム社会ともつながる国際経済においては金利設定もせざるを得ません。この辺が、エルドアン大統領が高金利を嫌い、西側諸国主導で理論が整備されてきた経済学の原則を認めない理由がありそうです。

まあ、エルドアン大統領やその側近の親族・関係者が所有している企業への融資やその返済のことだけを考えて、高金利を否定しているだけなのかも知れませんけれど、その辺は証拠が出ない限りは解明できませんね。

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