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『八月の御所グラウンド』万城目学

どうでもいいけれど、高校に入るまで彼のことを「まんじょうめがく」と読んでいたことをここで告白する。なんですか、まんじょうめって。あと、がくでもなかった。

『八月の御所グラウンド』は、第170回直木賞を受賞した作品だ。万城目さんはノミネート6回目で賞を勝ち取った。後世にも語り継がれるであろう「直木賞」に作品を書き続ける人の名前が刻まれたことはとても嬉しい。

本作に収録された「十二月の都大路上下ル」、そして「八月の御所グラウンド」の二篇は、どちらとも京都で起こる少し不思議な話だ。十二月〜は女子駅伝、八月の〜は草野球の話だった。スポーツには全く詳しくないが、凄く楽しく読めた。読み終えた後には自分も試合に参加していたような爽快感と充実感が胸に広がった。

いるはずの人間が存在しない、という些かホラーな出来事が起きるのだが、怖さというのは全く無い。寧ろ真実に近づくにつれて切なさが込み上げてくる。京都で起こる不思議な出来事に最後は心が温まる。そして今ある命のことを考えさせられる。

久しぶりにじんわりした。じんわりって、ただ温かい話という意味では無い。切なさや苦しさ、でも楽しい気持ちもある。登場人物たちのことをまるっと抱きしめたくなった。落ちていく夕日を見ているような気持ち、というのが一番正しいかもしれない。終わり方も綺麗だった。

この本はジブリの世界観が好きな方や、中高生にぜひ読んでもらいたい。理想を言えば八月の京都で読むのが一番良いだろうなあ。

改めまして、万城目さん直木賞受賞おめでとうございます🎉

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