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「悲しみを感じるな!」の呪いで身を滅ぼす人々|クレイマーが誕生するメカニズム

「自分の感情を決して認めてはいけない」といった否認が癖づくと、人生はやがて行き詰まる。

お店で顔を真っ赤にして、店員の人に「許せない」「責任者を出せ」と怒りを露にしているクレーマーを見るたびに「自分の悲しみを無視した結果か」と切ない気持ちになる。

クレイマーとは自身の悲しみを怒りに変えて、人をまきこむ人たちの別称だ。そしてクレイマーになる人ほど、弱味を見せることと自己開示が苦手だ。

怒りは第二感情と呼ばれており、最初に感じる第一感情は寂しさ、悲しみ、切なさ。

第一感情はすぐ第二感情へと置き換わるので、寂しさ、悲しみ、切なさを実感するのが苦手な人も少なくない。

自身の感情をしっかり受け取るのは、自己受容の最初の段階として必要不可欠だろう。

近年、中年男性の自死が増えているそうだ。彼らに共通するのは人を頼れず弱味を見せることも苦手というところかもしれない。

最近、男らしさの鎧の着脱が上手な男性としか付き合っていないので、くだんのクレーマーのようなタイプの男性は僕の周囲にいない。

「弱味を見せてはいけない」「大きく見せなければならない」「勝たなければいけない」といった信念で生きている人を見ると、無理して辛そうだなと感じる。

「強くあらねば」「勝たなければ」の呪いにかかっている男性ほど、人をほめたがらない。こういう人はきっと、心底自分をほめるというのも苦手で、自他に対して極めて厳しい態度で接する。

僕は「男たるもの」みたいな考え方が苦手なので、そういった人とは距離を置くようにしているが、「男たるもの」の呪いにかかっている人ほど、中年以降生きるのがしんどくなっているように映る。

辛いとき辛いと言えない人は、自分で自分をいじめているのと同じ。セルフネグレクトに該当するのかもしれない。

自身の悲しみを無視し続けた結果、心の器が悲しみであふれ返る。あふれた感情が怒りとなって表出することも多い。

そうなると人に避けられるようになり、どんどん孤立が加速する。

ここまで症状が進行すると、改善は困難を極める。

そうならないためには、まず自分の弱さを認める、悲しいときに「今、自分は悲しみを感じている」としっかり悲しみの感情を受け取ることが必要だろう。

喜怒哀楽に含まれている悲哀は、人間にとってかけがえのない感情のひとつ。

これを無視することは、感情が欠損したまま生きるのと同じかもしれない。

自己受容とは、ポジティブな感情もネガティブな感情も、しっかり受け取ることを指す。

感情を受け取るのは、自分を慈しむことにつながる。

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