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決して測ることはできないもの

この写真の左手の地面に、幼い男の子が眠っている。この写真を撮る少し前、この男の子のお姉ちゃんが床に段ボールを敷き就寝の準備をしていた。

この場所は商店やビルが立ち並ぶアーケード街になっていて、混沌としたエリア内にある。昼間は人通りが多く、いろんな生活用品や食べ物などの出店で賑わっている。

このときはすでに夜の23時間から0時だったと思う。私は毎週末、たいていこの時間から仕事に出ていた。ちょうど私が滞在していたビルの出入口近くではこのような光景が夜に見られる。私はその光景に慣れてはいけない気がして写真を撮った。

しかし、一番撮りたかったものは撮れなかった。この写真を撮る数分前、弟と寝る準備をしていたお姉ちゃんがこの場所にいた。気温は夜中でも暖かいとはいえ、段ボールと布切れでは朝方は寒そうだ。

弟を寝かせた後、お姉ちゃんはこの場から走り去って行った。近くにいた両親を呼びに行ったのか、理由はわからない。私はそのときのお姉ちゃんの笑顔が強烈に心に焼きついていて忘れられない。

それはとてもキラキラとした笑顔だった。目が輝いていて、幸せそうな表情だった。そのときしばらく見とれていて、自分には絶対にあんな笑顔はできないだろうな、と感じた瞬間だった。みすぼらしい服装と床に寝ないとならない状況、それでもあんなに幸せそうに生きている。

幸せとは何だろう。そして、幸せを他人が測ることはできない、と仕事に向かう車の中で頭から離れずに、今に至っている。

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