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関係性のパズル 

人と人は、それぞれが異なる感性や知能、経験値などを持つ別の個体である以上、完全に分かりあうことはあり得ない。それは血を分けた親子であっても、長年連れ添った夫婦であっても、固い絆で結ばれた同志であっても、ふとした瞬間に不協和音があらわれ、足をすくわれる思いになる。
だからといって、その不一致に落胆して失望し、せっかく今まで培ってきた関係性を断ってしまうのは短絡で意味がない。なぜなら、人を人たらしめる関係性とは、相手のことを完全には理解できずとも、なるだけ分かりたいと、なんとかして相手に寄り添おうとする双方向の意志と努力の賜物なのだから。
それは例えば、はまらない無数のパズルのピースを手に取り、あっちに向けたりこっちに返したりと試行錯誤して並べる過程にも似ている。要は、根気よく、少しずつ溝を埋めながらピースを繋げていくことが人間関係の醍醐味なのだ。その溝の深さにため息がでたとしても、あきらめずに、何かどこかに、とっかかりがないだろうかと知恵を絞ってみるのが、愛情なのかもしれない。どうせ通じないと諦めずに、それでもと、果敢に関わっていく姿勢が相手に伝わり、良好な関係性の扉をひらく鍵となるのだろう。

石井靖子

2024年3月13日 22:30


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