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【DAY 26】原作のある映画 「華麗なるギャツビー」

DAY 26
a film you like that is adapted from somewhere.
原作のある映画

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「華麗なるギャツビー」(2013)
バズ・ラーマン監督
レオナルド・ディカプリオ、トビー・マグワイア、キャリー・マリガン、ジョエル・エドガートン、エリザベス・デビッキ

1920年代、狂騒のアメリカ。ニック・キャラウェイ(トビー・マグワイア)はロング・アイランドのウェスト・エッグに住んでいる。大学からの友人のトム・ブキャナン(ジョエル・エドガートン)は横柄で意気盛んな金持ちで、その妻のデイジー(キャリー・マリガン)は、ニックの親戚でもある。しかし、トムの浮気癖もあり、その夫婦関係は冷め始めていた。

ある日ニックは、彼の家の隣に建つ大邸宅のパーティに招待される。そこでは、ニューヨーク中の成金が集まりどんちゃん騒ぎを繰り広げていたが、ホストは謎の男であり、誰も観たことがない。しかし、パーティ中にひとりの紳士が彼に接触して来る。それが屋敷の持ち主、大富豪のジェイ・ギャツビー(レオナルド・ディカプリオ)であった。

後日、ニックはギャツビーにドライブに誘われる。闇の酒場で裏社会のドンに紹介されたり、たまたま出くわしたトムから逃げるように姿を消したり、いまいち得体が知れないところがあって首をかしげるが、その本心をついに教えてもらえる。それは、従軍中に恋愛関係にあったが、戦後に疎遠になってしまったデイジーにひと目会いたいということだった。そんな彼のために、お茶会をセッティングすることにした。

それとなくデイジーをニックの家に呼び出し、そこへ偶然を装ってギャツビーが現れた。最初はぎこちない2人であったが、次第に打ち解ける。しかしそれは、もはや後戻りのできない恋の再燃の始まりだった・・。

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"a film you like that is adapted from somewhere." これ、「好きなリメイク版は?」という質問だと思っていたんだけれど、日本語役バージョンでは「原作のある映画」ということだった。全映画の1/2くらいが原作ありだと思うんだけど・・。

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とりあえず選んだのは「華麗なるギャツビー」の2013年版だ。1974年にはロバート・レッドフォード主演版があったが、その前にも1949年、1926年に映画が制作されたらしい。原作は、F・スコット・フィッツジェラルドが執筆し、1925年に出版された小説。

フィッツジェラルドは、近代アメリカ文学を代表する作家だ。でも日本ではあまり馴染みがない。ヒットしたのがちょうど戦時中だったので、リアルタイムに輸入されなかったということもあっただろうし、「世界文学全集」みたいなのに入れるには、少々通俗的すぎたのかもしれない。けれど、村上春樹が彼の最初のベストセラー「ノルウェイの森」にて、主人公ワタナベの愛読書という設定にしたことにより、そしてその後も、そもそも作者自身が好きな本だと再三紹介を続けたので、日本の文学界でも注目されることになった。僕も村上春樹を読んでなければ、たどりつくことがなかった小説だ。

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簡単に要約してしまうと、セレブの不倫、というだけの話。でも、あらすじを書いてみるとわかるけれど、この物語、ラブストーリーでもありサスペンスでもあり、恋慕や嫉妬や、焦燥や絶望や、人間が感じるややこしい感情が散りばめられ、いろんな伏線が結末に向かって吸い込まれていく、なんとも奇妙な話。

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本作は、そんな原作に忠実な脚本だった。でも驚いたのは、キャストが僕の原作のイメージそのままだったことだ。「巻き込まれ系」の大御所、トビー・マグワイアのニックがもうぴったりなのに始まり、トムもデイジーもジョーダンも小説から抜け出てきたようなキャラクター。しかし、実は農民の出身が大富豪にのし上がり、そして過去にどっぷり取り憑かれた男という、複雑でちょっと怖いジェイ・ギャツビーを演じるのは、なんと言っても、レオナルド・ディカプリオしかありえない。

ギルバート・グレイプ」(1993)でジョニー・デップの弟を演じて注目され、「バスケットボール・ダイアリーズ」(1995)や「タイタニック」(1997)などで大スターになるが、この頃はまだ「美少年」に寄っていて「凄み」がなかったけれど、「アビエイター」(2004)のあたりから、一気に迫力が出てきた。「ジャンゴ 繋がれざる者」(2012)で、手を流血しながらもアドリブで演技を続けたシーンは、「レイジング・ブル」(1980)で体重の増減を見せたデニーロアプローチのかわりに「ハリウッド俳優の役者魂」のエピソードの代表格となった。

本作で一番好きなのは、デイジーと会うためにニックの家に訪れたギャツビーが、「やっぱり帰る」というけれど、説得により、雨でびしょ濡れになりながら、顔面蒼白で対面を果たすところ。物語が転がり始める、大事な転換シーンなのに、それまでのスマートでエネルギッシュなギャツビーがそんな風になってしまうことに、奇妙な笑いを禁じ得ないエピソードだが、これをディカプリオが実写で演じると、その効果が倍増だった。

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そして、監督は「ムーラン・ルージュ」(2001)のバズ・ラーマン。この人はBGMに現代音楽を使いがちで、今回も1920年の話なのに音楽監修はJay-zで、ヒップホップの流れるギャツビーのパーティシーンとなったが、これがまた下世話な乱痴気騒ぎにぴったりだった。こういうカラフルな狂乱を撮らせると一番だ。

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