ある朝、ここにいる

目が覚めたら、隣に子猫がいた。
飼って1年が過ぎた、フータ。愛称は
ふた。この子は、根っからの甘えん坊。
目が覚めると、いつも私か、同居人の 
傍で眠りこけている。狭い額を
撫でてやると、短い前足で
私の腕を叩いて、丸い目を開いた。

甘えた声でないて、おはよう。
と言っているのか、小さくて可愛い
頭を擦り付けてくる。
「おはよう、今日も早起きだね」
リビングでは、子供も起きてきたのか
夫にダッコをせがんでいる。
賑やかだな、と口のなかで呟いて
着替えるために、身を起こした。

リビングへ降りると、二人から
朝の挨拶。こんなにゆったり始まる朝は
夫婦にとっても久しぶりだった。
「ユキ、起きたの。早いね」
「マァマ遅いの」
可愛い小言に、つい笑った。
ごめんね、と謝るとニッコリ。
笑顔は夫に似たらしい。

理性的で冷静すぎるところは
似ないで欲しいな、と言っていた夫。
そこも多少似ている気がする。
本人には言わないけれど。

「今日も一日よろしく」
相変わらずの優しい言葉。
ユキを自分のとなりに座らせて
話始めた子供と、のんびり会話。

(家族は作るもの、か)

ある朝の優しい記憶。