『沈黙』を観た後のガッカリ感。
何がガッカリなのか言語化が難しいけども。

切支丹迫害の残酷さや、日本にキリスト教を広める難しさは伝わったんだけども、何かピンと来ない。当時の日本では支配者層は閉鎖的で傲慢、身分が低く学のない貧しい農民にしかキリスト教は布教出来なかったとでも言いたげ。

イッセー尾形や浅野忠信の言葉は至極ごもっともなんよ。当時は政治的にキリスト教の布教を禁じていたわけで、それに対して宣教師達が「ヤダ、信じらんない！」って反応で間抜けすぎる。そんな宣教師達の為に迫害されて死んでいく切支丹が気の毒すぎる。

現代の隠れキリシタンの子孫の方のインタビューでは、切支丹と言っても、本来のキリストを信仰してるというよりは、切支丹弾圧で殉教してた先祖達を隠れながら信仰するのが隠れキリシタン、みたいな事を言ってたような気がするんやが、この映画観て子孫の方々は何を想うのだろう…？

てか、こいつら何しに来たん？

自分らの師匠的な存在の神父を探しに密入国しに来たわけやが。現地の隠れキリシタンにとっ捕まって命がヤバい宣教師やらされたって展開にするの、ご都合主義ですなぁ。自分らは悪くない、みたいな。

過去の宣教師にしてもそうだけど、布教活動を理由に来日した外国人を理由もなく殺すなんて事があったら国際問題になるのだから、いくら当時日本が鎖国中だったとはいえイエズス会所属の外国人を捕まえて殺すなんてわけないでしょ。キリスト教の布教を禁止するってだけなんだから、密入国者は強制送還されるのが妥当。流石にフィクションすぎんか？
スパイだったり日本人を奴隷として連れ去ってた外国人であれば処刑するかもしれんが、そこんとこの善悪はいくら江戸時代でも罪状と処罰の判断は出来るやろと。幕府を見くびるな。

切支丹ってだけで残虐な殺され方されるのにも説明が足りない。浄土宗であれ切支丹であれ、一揆を起こす農民を粛清してきた歴史なら知ってる。それか、外国との密貿易で密かに利益を得ていたとかで粛清されるのも分かる。でもこの映画の、善良な領民を、ただ切支丹だからと言って見つけて殺すのが理解が出来ない。「そんな理解出来ないのが当時の日本人」とでも言いたげ。こっちもキリスト教がどういう宗教が知らんけど、三浦按針が家康に助言したように、お前らキリスト教を広めて日本を植民地にしていく魂胆やなかったんか？

長い時間（3時間）使ってマーティン・スコセッシは何が言いたかったの？どう考えても
「見て！当時の日本人、酷かったの！」
「日本はこんな酷い迫害してたの！」
「だから本物の宣教師がいなくなっちゃって、キリスト教本来の形とは全然違う宗教になっちゃってたの！」
「でもキリシタン可哀想！宗教差別反対！」
って目線でしか描かれてないように思うんだよな。

んで、こんな酷い状況に、神は沈黙しとるんですわ。

えっ、違う違う。
神からの言葉やなくて、お前らがまず十字軍侵略の説明しろや。何でユダヤ人を殺したりイスラム教と戦ったりしたんか良く分からんからさぁ〜。

まだ日本人を誤解してるのもガッカリだし、本来魅力的なキャラクターになるはずのキチジローが最後までクソすぎて窪塚の無駄使いだし、とにかくキリスト教を全く理解出来ずに終わったのも残念だった。

あと、サラッと日本を“沼地”って表現すんな。