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富士見通りの富士山と大学通りの桜


R教授は、学生の卒業論文をひととうり読み終え、

一息つこうと、富士見通りにある馴染みのBARに向かった。

「あっ、雨かい。」

傘をさすまでもないと、そのまま歩いた。

いつもの、薄っぺらいベニヤ板で出来たようなドアを開けると、

マスターがグラスにウィスキーグラスに削った氷を落とす瞬間だった。

いつもの、トリスを頼むとマスターは無言でまた氷を削り始めた。

つまみの落花生の殻を床に捨て、一杯を飲み干した。

世間話をした。

「桜はもう咲いたかね。」

もう一杯、お願いした。

そして、また落花生の殻を床に捨てた。

「三分咲きぐらいですかね。」

マスターが呟いた。

煙草を切らしていたので、

ぼんやりと並べてあるボトルの数々を眺めた。

サザンカンフォートのソーダ割をもう一杯お願いした。

次のBARを思案していたが、もう午前5時前だった。

そのBARのトタン板みたいなドアを出て、

富士見通りから、東を見ると、雪を被った富士山が朝日を浴びていた。

季節はずれの雪に変わっていた。

道路にも轍が出来ていた。

ふと、向かいのカフェバーを見ると、女の人が出てきた、

そして、道路の真ん中にある黒い物体を拾いあげ、端に寄せた。

轢かれた猫だった。

R教授は、雪道を国立駅の方向へ向かった。

「あの三角屋根も最後なのかと思った。」

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そして、駅のプラットホームから、

大学通りの南に延びる両脇にある並木にポツポツと咲き始めた桜を眺めた。

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すぐさまやってきたオレンジ色の列車に遮られ、

荻窪の家に帰るのだった。










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