【DTMクラシック】フンメル/歌劇「ギース家のマティルド」Op.100 序曲(1821年ワイマール初演版)

※原曲: バレエ音楽「ミティリーニのサッフォー」,Op.68 序曲(1812年)

さて、今回作成したプログラミングはどちらの序曲と表記するか迷いました。
というのもこの序曲は「ミティリーニのサッフォー」(Sappho Von Mitilene)という1812年に作曲され、アン・ディア・ウイーン劇場で初演されたバレエ音楽の序曲ですが、前年の1811年に初演された歌劇「ギース家のマティルド」(Mathilde von Guise)をフンメルは後にワイマール宮廷楽長になってから改作し、1821年2月17日にワイマール宮廷劇場で再演された際にもともとの序曲に代えて「ミティリーニのサッフォー」の序曲を当てました。この時のイタリア語台本の改作がOp.100として出版されたため、この序曲も歌劇「ギース家のマティルド」の序曲として広く知られるようになりました。

楽曲はアンダンテの序奏から始まり、軽快で華麗なアレグロモルトが続き、最後はテンポを速めたコーダで華々しく締めくくられます。もともとは1812年の作品ですが、ウエーバーを感じさせる音形、展開、和音が多く見受けられます。
この曲の序奏部の木管楽器のテーマはバレエ音楽「ミティリーニのサッフォー」の第3幕に登場するシーンの音楽で、このオペラ本編には出てきません。ここは改定しなかったんですね。しかしその後の本編の特徴を連想させるには十分な効果をもっています。
楽器編成はフルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン2、トランペット2、トロンボーン、ティンパニ、弦5部

聞くことのできる数曲のフンメルの序曲や管弦楽曲を聞くたびに、交響曲のような長大な集中力のある構成力はないけれど、とても魅力ある楽曲が多いので、彼の序曲集とかバレエ音楽全集とかもっと録音されればよいなぁと願っています。

さて、この歌劇「ギース家のマティルド」,Op.100は、3幕のオペラですが、もともとはドイツ語のジングシュピールでケルトナートル劇場で1811年にウィーンで初演されました。初演時からこのオペラは大絶賛を受け、フンメル本人によるピアノ編曲譜も出版されたほどでした。ワイマール楽長時代の1821年の改訂版はイタリア語の台本に改定し、初版のいくつかの楽曲に手を加えられて、ワイマール、ベルリン、リガで演奏されました。「ギース家のマティルド」はフンメルのオペラの代表作となりましたが、彼の死後より忘れられ、2008年にフランスのランで初録音の計画ともなった演奏が行われるまでレパートリーから外されていました。

軽い喜劇要素を含んだハッピーエンドで終わるオペラですが、その音楽は美しいアリアや重唱、軽快なアンサンブルが散りばめられたとても魅力的な作品で、モーツァルトやロッシーニ、ケルビーニやスポンティーニと類似した性格を持っています。音楽はモーツァルトのコシ・ファン・トゥッテに似ているかな、という個人的な印象を持っています。


現在2008年にフランスのランで復刻再演された演奏が録音され、これが唯一のオペラ全曲盤となっています。
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