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【DTMクラシック】フンメル/ピアノ・ソナタ第5番 嬰へ短調,Op.81

Hummel,Johann Nepomuk/Piano Sonata No.5 in F#-minor,Op.81(Programming)

Programming Music
Johann Nepomuk Hummel
Piano Sonata No.5 in F#-minor,Op.81
00:08 - 1.Allegro
08:55 - 2.Largo con molto espressione (in B minor)
17:31 - 3.Finale:Vivace

Computer Programming : Hummel Note(Mikio Tao)
Programed by Muse Score4
Sound:Muse Score4 & MuseSounds Grand Piano
Re-Edit Mix & Matering:SSW10 Lite

J.N.フンメル/ピアノ・ソナタ第5番 嬰へ短調,Op.81(1819)

ピアノ・ソナタ第5番嬰ヘ短調Op.81が作曲出版されたのは1819年です。ベートヴェンは早速この曲を弾いて「こんな難解で弾くことのできない曲はダメだ」と言い放ったといわれています。
それだけ当時としては破格の演奏技術を要求される曲だったわけです。
そして面白いことにベートーヴェンはこの曲に対抗しようと同年内に「ハンマークラヴィア・ソナタ」を作曲して出版しています。ベートーヴェンは技術的には対抗し、音楽的には単なる「難解さ」を「情熱的」に表現して音楽性の自らの優位性を誇示しようとしたのかもしれません。

ただ、フンメルのこの曲の出版後すぐに挑戦するピアニストが多数現れましたし、先のベートーヴェンもしかり、シューベルトやヴェーバー、さらにロマン派の作曲家たち、とくにショパン、リスト、シューマンらに影響を与えました。実際に彼らに加えその後の世代アルカンやメンデルスゾーンからブラームスに至る作曲家の様式的発展を予期した曲と言えるでしょう。

この曲はショパンはこの曲が自身のピアノ・ソナタ第3番への教材となったとし、ブラームスのピアノ・ソナタ第2番嬰ヘ短調Op.16にも影響を与えた可能性があります。

シューマンは、この作品に対し「この曲だけでフンメルの名を不滅のものにする」と述べたといわれています。

1.Allegro

第一楽章はソナタ形式のアレグロ。この楽章はこの時代のソナタでは通常の提示部の反復はなく、テンポの変化も多く、強弱の移り変わりも多く、演奏者を激しく疲弊させます。また「形式的に構成されたソナタの第1楽章よりもファンタジーに近い、文体の融合」と評されていました。

冒頭は両手が全打音があるオクターブのユニゾンでドラマチックに開始されます。すぐにテンポを落として重いひきづるような歩調で進むかと思うと突然テンポを速めて何かを叫んで休止します。この楽章はこうして停止したり、開始したり、速度を落としたり、テンポを戻したりしながら展開し、本当に「落ち着きがない」曲で主題と経過部の区分けもあいまいです、支離滅裂という言葉で表したくような曲です。
二重トリルや三度の重奏も多用されているので演奏者には熟練したテクニックに加え、この曲を演奏するための訓練が必要です。

聴き手も混沌とした曲の展開についていくために神経を使います。展開部に入ると特定のモチーフが変調を繰り返します。嬰ヘ短調、変ロ長調、ト短調、ハ長調、イ短調、嬰ヘ長調、嬰ヘ短調、最後は嬰ヘ長調でリズムの感じられない混沌としたパッセージを挟んで終わります。

私もこの曲を初めて聞いた時はその難解さゆえにあまり好きになれなかった曲です。モーツァルトの弟子として生涯わたってリスペクトする曲を作り続けたフンメルの中では最も「異質」な存在と言えるでしょう。

2.Largo con molto espressione (in B minor)

第二楽章はラルゴ・コン・モルト・エスプレッションのロ短調。この楽章の冒頭もダブルフォルテのユニゾンで、人間の「驚き」を表現しているかのようなモチーフで始まります。第一主題の前に導入モチーフがあるのです。
続く第一主題はロマン派の音楽です。そこにはショパンやシューマンと言った後の音楽家の登場を予見しています。
そして第一楽章と同様にリズムがあったり、無くなったり、調が安定したり無調的になったり、さらに多くの装飾とアインガングとカデンツァが差し込まれて、混沌として虚無な重たい世界観を聴く者に強制してきます。
この曲も難解です。

3.Finale:Vivace

第三楽章のフィナーレはロンド形式のヴィヴァーチェ。この曲の一番演奏技術が問われる楽章です。この楽章の譜面を見ると前の二つの楽章は、このロンドの為の運指訓練に過ぎなかったのでは? と思えてしまうほど。実際のプロの演奏であっても苦労して弾いていると感じるものが少なくありません。

主題はテンポの速いスラブ舞曲のような、この曲全体の中では輪郭のはっきりしたメロディーで始まります。フガート書法ではじまる第二主題と共に何度か繰り返され展開していきますので全体の曲の輪郭は、前の二つの楽章より明確ですが、はやりテンポの中で繰り返し現れる二重トリルや三度の重奏パッセージ、両手全ての指が必要かつ別々の動きを要求させてくるなど技巧的です。

今回のプログラミングする際に、第一楽章はフンメルの指示した速度よりやや遅め、第二楽章は指示通り、第三楽章は指定速度よりかなり遅め、で生成しています。

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