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猟記(七)

11月17日、天気晴れときどき雨。ヤマドリ2羽発見。距離2、30メートル。
見つけたところで車を止めて銃に弾を入れる。ヤマドリもなにかの異変に気づいたみたいでソワソワしはじめている。急いだらばれる。車のドアを開き、音をたてないように慎重に車を降りる。ヤマドリは動かない。車の前まで移動。さすがに気づかれたのか1羽が右の林に歩いていく。もう1羽はまだ動かない。もう少し近づきたかったが(なんせ昨日10mの距離でも外したので)、これ以上動いても気づかれそうだ。照準を合わせて狙い、撃つ。ドン。撃って0.5秒後くらいにヤマドリは何事もなかったかのようにバタバタバタと飛んでいく。あー、と、それを見守るおれ。また外した。なんで当たらないんだろうか。
師匠には下の方を狙えと言われている。土に当たるくらいの足元を狙えと。そのことを忘れないようにしたいのだけど、いざ獲物を前にすると、気をつけないといけないことなんて頭から吹き飛ぶ。バレたくない、撃ちとりたい、そういう思いがぐるぐると脳内を駆け巡っているのだと思う。銃を構えて、2秒、3秒の間に引き金を引く。その間に「下を狙う」くらいのこと頭をよぎってもいいような気がするのだけど、今のところ撃って外したあとに「あ、下狙うの忘れてた」となる。
50m先の的に当てる練習を射撃場でやっているのだけど(そのときの弾はスラッグ弾と言って大きな一つの鉛が入っている弾で、大きな獲物を仕留めるときに使われるもの。ヤマドリは小さな粒がたくさん入っている散弾を使って仕留める。構えて撃つまでの動作に違いはない。)、それには当たるのだ。それに当たると言うことは基本的には飛ばしたいところに飛ばせているということ。それなのに実際に獲物を狙うとなると当たらない。外し続けているので当たるイメージすら湧かない。師匠は弾が上にいってるんだろう、という言うけれど、もちろんそれも本当かどうかはわからない。一旦下を狙って撃ってみてどうなるか試さないことには本当の理由がわからずじまいになる。この期間中にあと何回ヤマドリに出会えるかわからないけど、1羽はいただきたいな。結局今日もスーパーの肉を食う。

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