天災

 小さい頃、私は庭でアリをいじめて喜んでいた。
 アリの行列や巣穴に水をかけると、バタバタ逃げ惑うさまがおもしろかった。
 私とアリでは圧倒的に私が有利であった。
 アリにとって私は、絶対にかなわない天災のような存在であった。
 大きくなってから思うのである。
 災害で苦しんでいる人を見ると、アリを思い出すのである。
 近頃は虫を殺さなくなった。
 害虫を見ても放っておくようになった。
 唯一、蚊だけは殺すが、殺生を重ねるたびに申し訳なくは思っている。
 どうか天災で苦しんでいる人たちが、一刻も早く普通の生活に戻れますように。

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