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#34 最近よんだもの(8)

「高学歴難民」(阿部恭子、講談社現代新書)

 何かしらのデータを基に分析するなどしたノンフィクションではなく、ルポルタージュ。他人の不幸をのぞき見するような下世話な興味で一気に読み終えたが、面白い本だったというには重い一冊。高いプライドと狭い視野。親の学歴偏重や特権意識や劣等感はゆがんだ形で子に引き継がれる。佐川一政もコンプレックスが攻撃性に転じた例としてあげられている。どうなんだろう。

 高学歴は呪いでもあり、おそらく救いでもあるのだろう。よすがとする人にとっては輝ける勲章なんだろうな。その呪いは、効果絶大な人もいれば、まったく効かない人もいるだろう。「人を馬鹿にしてはいけない」は、けだし名言。当たり前というなかれ。

 私はさほど高学歴ではないと思うが、フロアを見渡せばいわゆる高学歴が多い職場にいる。20年以上この組織に属しているのに、たまに自分が迷い込んだ野良犬のような気分になることはいまだある。自分の劣等感と向き合うべきか、受験生の子をもつ親として煩悶することもある。

 著者は、犯罪加害者家族支援という、耳慣れないジャンルの組織を立ち上げ活動している。高学歴に限らず、人はいかにして犯行に走るのか。加害者の家庭環境や家族関係などのデータ収集・分析などによる、犯罪を未然に防ぐ活動に期待したい。応援します。

「真田の具足師」(武川佑、PHP研究所)

 面白かった。膨大な史料収集や調査や分析に基づき(想像ですけど)、それを物語に昇華させていく小説家の想像力は感嘆に値する。鎧兜の細かな説明が多く出てくるが、想像しきれない部分も多々あり、図版があればよかった。でもつけたら野暮なんだろうな。

 「世界のエリートが学んでいる 教養書必読100冊を1冊にまとめてみた」(永井孝尚、KADOKAWA)は、図書館で借りたけど688ページの鈍器本で未読了。100冊のラインナップが刺さるので、近く買おうと思います。タイトルが気恥ずかしいですが、読みやすく、いい本だと思います。生成AIをうまく使って編集したのだろうか。この手の本に手を出してしまうのは、コンプレックスの裏返しですかね。

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