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#50 百鬼堂農園(3) ロードバイクに鍬しょって

 初心者が農作物をうまく収穫できるのは半分程度、というような文章をどこかで読んだ。ならばこちらの目標はそれ以下の4割だ。NPBなら首位打者である。ただ、この連載が続く可能性も4割くらいではないか、との危惧は正直なところ抱いている。

 今回は道具の話。

 農具が借りられる大規模な市民農園は、うちから遠い。契約したところは、すべて道具を自前でなんとかしなくてはいけない。農具を畑に置きっぱなしにしてもいけない。車での来園は原則禁止。肥料だの農具だのを運び入れる際に短時間停めるくらいは大丈夫。水はそれほど重要でもないらしく、近くの公園や側溝で汲めばなんとかなるらしい。それでも畑まで運ぶのは大変だと思うけど。

 勢いで始めるしかない。まずは図書館で本を借りてよみあさる。あまり細かく面倒なことはできない。同僚によると、野菜の育て方はYouTubeでほとんどのことが分かるという。必要な道具を調べ、ホームセンターに出向く。出費は致し方ないが、あまりかさばる道具をいくつも買って家に持ち込みたくない。農園をやめたらかさばる粗大ゴミにしかならないし。

 何はなくとも鍬(くわ)が必要だ。ホームセンターの売り場で、手にとって振りまくる。あまり軽いのは土に入らず使いづらいとのこと。柄が800ミリの短いのが運びやすいけれど、使いやすさで1050ミリの長い柄のものを選んだ。柄の取り外せる携帯用のスコップ。ワークマンなどで、軍手、長靴、首に日よけの覆いのついた農作業用帽子、足カバー。どれも高価なものではないが、やはり物入りだ。

 これらを帆布製のリュックに放り込む。リュック上部の口からは、長い柄が顔を出している。そして、移動手段はロードバイクだ。鍬を背負って長靴でロードバイクを駆る中年男。カッコいいのではないだろうか。

 そんなことないですね、やっぱり。

 ツール・ド・フランスでは美しすぎる田園風景の中を駆け抜けていくロードバイクですが、農耕のための道具を背負って田園を目指して走るには向いていないようです。しんどい。

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