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「ストレスBANK」


地図に載っていないとある田舎町に、溜まったストレスを預かってくれる謎の銀行が存在した。


その名も「ストレスBANK」



巷には、酒を飲んだりカラオケをしたりと色々なストレス解消法があるかと思うが、これはストレスを一時的に忘れるための誤魔化しに過ぎず、完全に抹消したと言う訳では無い。


翌日以降も延々頭の片隅に残る嫌な”残脳感”。少しの欠片がじわじわと精神を蝕む心のガン細胞だ。


それに対し、この「ストレスBANK」は、ストレスを預ける事でそれらを完全に抹消する事が出来るのだ。


通常の銀行のように簡単な手続きをするだけで個人口座を開設する事が可能だし、預けるだけストレスが完全に0になるなんて、こんなに良い話はない。


我先にと、この「ストレスBANK」に殺到しそうではあるが、実際は閑散としているようだ。


何故だろうか?


それは、簡単ではあるが”特殊な条件”を必要とするからだ。


「ストレスBANK」は、楽しかった思い出1つと引き換えに、ストレス1つを預かってくれる仕組みで成り立っている。


嫌なストレスを完全抹消するために、代わりに楽しかった大事な思い出を抹消されてしまう。


ようは、プラスとマイナスを相殺させて”無かった事にされてしまう”のだ。


さらには、新規で預けたストレスに相当する楽しい思い出の該当が見当たらなくなった時…

恐ろしい事が起きてしまう。


今まで相殺して来た「楽しかった思い出」が、みっちりとストレスをまとった「悪夢」へと姿を変え、今後の人生に直接返済される事になる。



今日は、数年ぶりに出来た彼女との初デート。


お待たせ~と振り返ると、そこには厚化粧のメスオランウータンが。。


うげっ?? と思いながらもデートは進むんだ。


街を歩くだけで指をさされて笑われる…なんてのは当たり前で、手を握られるだけで骨折はするし、レストランでは丁重に入店拒否されたと思ったら、こっそり裏で通報されてたし。


疲労困憊で家に戻り部屋でくつろぐも、延々繰り返される、バナナ農園のDVD鑑賞。


新品の絨毯にお構い無しによだれをダラダラ垂らす始末。


…何だかんだでやっと帰ったかと思ったら、リビングに落ちる大量の剛毛と、強烈な獣臭が部屋にこびり付いていた。


でも、不思議とストレスは感じ無いんだよなぁ



ノンストレスでスッカラカンの人生になるのか。

悪夢しかないがノンストレスな人生なのか。

ストレスと共存する通常の人生なのか。

どれも正解にしたくない。




このようにストレスだけを完全抹消させる事は至極難題であると言える。


それ故、いつしか政党まで立ち上がる始末。


【 日本ストレス壊滅党 】



「我々日本ストレス壊滅党は、この世からストレスを完全に…」


この政党が民意を集めて政権を握り、この世から完全にストレスを抹消したとすると…


それはそれで色々とまた別の問題が発生するのだが、それはまた別の話。


<Fin>


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