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短編創作「半透明の努力」

ボクはもうこの世には居ない存在。

いわゆる幽霊ってヤツだ。

生前消極的であまり目立たない人生だったが、別に目立つ事自体が嫌いという訳でも無かった。


なので、幽霊となった今では時々修学旅行に帯同し、グループ写真とかに勝手に写り込んでいる。


写り込んではいるが、写真にボクの姿が反映される事は無い。


何故か?


心霊写真というのは幽霊側からすると思いの外写り込むのが難しく、非常に疲れるのでボクは滅多にやろうとはしない。大変な思いをして写ったところで、怖がられるだけだしね。ハイリスクノーリターンってヤツさ。


鼻をつまんで息を止め、おもいっきり力み、顔が真っ赤になる感覚って分かるでしょ?全身の血液が頭に集中するような感覚。

心霊写真ってのは、あれの10倍ぐらい力んで、それでやっと5%ぐらいの確率で現世に出現できるかどうかの塩梅なんだ。

力めば力むほど頭上のゲージが溜まって行って、色が徐々に濃くなって行くような仕様なんだけど、もし成功したとしても、大概はかなり色味が薄い半透明な状態で写し出されるんだよ。

だから、気負って髪の色をピンクとかに染めたとしても、かなり分かりづらいのでやらない。



こんな状況なので、TVとかで騒がれる幽霊がクッキリと写り込んだ心霊写真ってのは、ほとんどフェイクって言えると思う。だって、どんなに頑張って力んでも繊細な水彩画ぐらいの淡~い感じでしか写らないんだもの。


また力みが全く見受けられない、血の気の無い涼しい目つきでとか、薄ら笑っている表情でとかで写真に写り込んでいる …なんてのは不可能だ。



そんな余裕はねえ!

こちとら和式トイレに座り込むような「心霊写真協会オフィシャルの恥ずかしいポーズ」でメチャクチャ踏ん張ってるからだ。

「 ぐぬぉぉぉぉぉおおおおお!! 」



涼しい表情では無く、人を呪い殺さんとばかりの鬼の形相で写っている写真は、もしかしたら本物の心霊写真なのかもしれないね。


でも、鬼の形相の真相は「目立ちたがり屋で写真に写りたいがため」に恥ずかしい思いまでして努力をしている表情なので、決して人を呪い殺すとかでは無いよ。むしろ微笑ましい表情だよね。




さて、巷に転がる心霊写真を見返して欲しい。


あなたの背後に立つスラっとした髪の長い女が、鬼の形相で睨みつけている…


えっ 怨念?? そんなの1㎜も無いよ。

ただ、心霊写真協会オフィシャルの恥ずかしいポーズで、メチャクチャ踏ん張ってるだけさ。健気だろ?



どうかな? 見方をちょっと変えると今まで怖かった物も、一転全然別の印象になるんじゃないかな?


でも、絶対に意中の相手には心霊写真には出て欲しくないものだね。鬼の形相見たくないもの。。


さて、そろそろ京都の墓石でもかじりに行ってこようかな?上品な甘さで美味いんだよねぇ~

こちとら気楽に幽霊やってるからお祓いしないでね。

南無ペロッ


< Fin >



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