サンタの存在

中1くらいのクリスマスの日、「サンタはいないのよ」と親に改めて告げられて、わたしはギャン泣きした。プレゼントがもらえなくて悲しかったわけではない。

話は幼少期までさかのぼる。幼稚園児くらいだったわたしは、まだまだサンタさんを信じていた。良い子にしていないとサンタさんは来ないから、早めに布団に入るものの、寝室の窓からサンタさんが落っこちてきたときに備えて、弟と一緒に布団に頭までもぐって身を守る練習をしていた。いや、サンタさん助けろよ。何はともあれ、クリスマスに真摯に取り組んでいた。

サンタの存在を確実なものにしたのは、手紙に残されたサンタからの返事である。ツリーに吊るしていた手紙に見たことも無い字が書かれていたのである。今思い返せば、ただの筆記体なのだが、そんなもの知る由もない。親がそんな文字を書けるはずがないと思っていたので(失礼)、私はサンタ文字だと信じ込み、一体どうやって家に侵入したのだろうかと、捜査一課の刑事並みの現場検証を頭の中でめぐらせていた。

小学生になると、よく出てくるのが「サンタさんいるのかいないのか」問題である。学年が上がるにつれ、「サンタさんいない派」がだんだんと過半数を取るようになり、わたしもいつの間にか「サンタさんはいないんだな」と漠然と思うようになった。前までは空に向かって「サンタさんありがとう!」と満面の笑みで言っていたがそれも恥ずかしくなった。

でも、わたしの性分上、本当にサンタがいないのか検証しないと気が済まなかった。そこでサンタがいるのかを検証する施策をいくつか打った。

1つ目。家宅捜索。

ツリーに手紙を吊るして1週間くらい経った頃から、家じゅうの押し入れという押し入れ、引き出しという引き出しを捜索しまくった。屋根裏に続く扉も、棒で突っついて押し開けたりしてみた。オカンにばれないように、短時間の捜索を数日に渡って繰り返した。しかし、決定的証拠となるブツは上がらなかった。

2つ目。手紙への工作。

いくらサンタとはいえ、手紙の中身を見ないことにはプレゼントを届けられまい。けれど、手紙を人間っぽく開けていたらそれはサンタさんではないというナゾ理論のもと、手紙に工作を加えることにした。それまでは、大きめのメモ帳に手紙を書き、穴あけパンチで穴を開けて輪ゴムでツリーに吊るしていたのだが、その年は手紙を封筒に入れ、その封筒をセロハンテープでぐるぐる巻きにした。

すると数日後、見事に封筒がビリビリに破れた状態の手紙が見つかった。わたしはコナンばりのおとぼけ声で「あー!誰かが手紙読んでるーーー!何でかなーー???」と言った。すると次の瞬間、オカンが「そんなこと言ってる子にはサンタは来ません!!!!!!!!」と烈火のごとく怒りだして、「ごめんなさいいいいいいい」としこたま反省する結果となった。

3つ目。プレゼントを指定しない。

サンタなら、わたしの潜在ニーズを汲み取って、ドンピシャのプレゼントをくれるに違いない。そう思って、手紙に「すごくおもしろいプレゼントをください」とだけ書いて吊るしてみた。わたしはどきどきしながら25日の朝を待った。

結果、絶妙に反応をしづらいプレゼントを貰った。貰った以上、一定ちゃんと喜ばなければいけない。わたしはピンポイントでプレゼントを指定する大切さを学んだ。

         ***

サンタがいるのかを検証する施策を打てども打てども空振りに終わり、わたしは検証を諦めた。というかサンタさんがいようともいまいとも、どっちでもよくなったのもあった。

そして、サンタさんがプレゼントを届けてくれる間は、サンタさんがいるという前提で振る舞い、その恩恵をフルに受けることにした。

サンタさんいるの?という質問はしなくなった。相変わらず「サンタさんありがとう!」と言い続けた。ギリギリ買ってもらえそうな値段の見分けもつくようになった。

そうこうしてるうちに中1になった。その年はたしかPSPを頼んでいた。そして25日の朝、そこにプレゼントは無かった。

キョトンとしてると「サンタはいないのよ」と言われ、「PSPが売り切れで、迷彩色のやつしか無かったから今日までに用意できなかったの」と説明された。その瞬間、涙がポロポロととめどなく流れてきた。わたしは号泣してしまった。

プレゼントが貰えなかったのが悲しかったわけではない。「サンタさんはいない」と言われたのがなぜかすごく悲しかったのである。サンタさんがいないという事実はとうに知っていた。でも実際にいないと言われることは何かの終わりであるように感じたのだ。

今振り返ると、たぶんわたしが感じたのは、無邪気な時代の終わりだったのだと思う。

サンタがいるかいないかは曖昧でいい。
曖昧だからいい。
サンタはいないと子どもはいつの間にか気付くのだから。
「いつの間にサンタ来なくなった」でいいのだ。

冷凍庫をハーゲンダッツでいっぱいにします!