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ボクは「天パー」

●天パーに悩んだ思春期

ボクは「天パー」。知らない人がいるかもしれないけれど,
「天パー」とは,「天然パーマ」,つまり,髪の毛が生まれつきクルクルしていたり,縮(ちぢ)れていることをさす。

 さて,中学校に入学する頃,ボクにやっかいなものが訪れた。
その名は---思春期。
自分のことがそれまでになく気になってくる,
というか,自分が他人に,とりわけ異性に,どう見られているのかがとても気になってしかたなくなる。
 ボクは,登校前に鏡に向かい髪をまっすぐさせようと努力した。
当時は男の子向けの整髪料なんて売ってなかったし,
あったとしても学校にそんなものをつけていったら,
先生にボコボコにされたはずだ。

ボクは,髪に水をつけてクシで引っ張った。
すると,何とかまっすぐになる。
ホッとして家を出るのだが,登校途中で髪は乾き元のように縮(ちぢ)れてきてしまう(T_T)。
そんな空(むな)しいことを毎朝繰り返していた。
本当に,もうこの天パーの始末には苦しんだ。
天パーに産んだ親をうらんだくらいだ。

●天パーに悩まなくなったボク

 ところが,高校生のある時を境にこのコンプレックスは吹っ飛んでしまったのだ。
高校の部活の先輩に三島さんという女性がいた。
彼女はすごく明るくさっぱりした性格で,しかも髪に当時はやりの「ウルフヘア」というパーマをかけているオシャレな人だった。

その三島さんが,ある時ふとボクに声をかけてきた。
「〇〇く~~ん,その髪ってパーマかけてるの?」
ボクはちょっと口ごもった。
「・・・いや・・・天パーです」
すると,「へぇ~~いいねえ~」
と,すごくうらやましそうな声が返ってきた。
「エッ?」ボクは自分の耳を疑った。

三島さんはさっさとどこかへ行ってしまったのだが,
ボクはしばらくその場にボ~ッと立っていた。
「へぇ~~いいねえ~」かぁ・・・
へぇ~~そうかぁ,そんなふうに思ってくれる人もいるんだぁ!(^^)!
おしゃれな人の言葉だけになおさらうれしかった。

 その時から,ボクは天パーのことがまるで気にならなくなった。
それどころか,今はむしろ天パーな自分の髪をけっこう気に入っている。・・・不思議なことだ。

 いま,思春期のまっただ中にいるあなたも,ひょっとすると,昔のボクのように自分の容姿(ようし)のことで何か思い悩んでいるのかもしれない。
でも,自分を恥ずかしく思うなんてもったいない。
広~い世の中には,
あなたがコンプレックスを感じている部分を,
逆に「ステキ!」と思ってくれる人がいたりする。

ひょっとして,そうした人は,いま,意外と近くにいるかも知れない。
だから,ボクは,あなたに,
コンプレックスを気にしすぎないで,〈そのままの自分〉を大切に生きて欲しいなあと思う。そうすればいつの日か,あなたのコンプレックスが,あなたを輝かせる何かに変わる日が訪れるかもしれない。

 そして,誰かのどこかを「ステキだ」と感じたら,それを相手に伝えてあげて欲しい。そういうことって,何だか恥ずかしいかも知れない。
だけど,サラッと,本当に一言でいいから,教えてあげて欲しいのだ。
その一言が,何気ない一言が,
時には誰かの悩みを吹き飛ばすほどの力を持つこともあるのだから・・・。

―― 以上です。
中高生は思春期真っただ中,今も昔も,自分の容姿が気になってしかたがない。コンプレックスも、いじめだって、容姿がもとになって起きることが少なくない。そんな子どもたちに贈る「定番」の学級通信です。この号は中学3年生の6月に発行しています。できるだけ1学期のうちに発行するほうがよいかもしれません。いい雰囲気はなるべく早いうちからつくっていきたいですからね。

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