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架空請求が来たので、騙されたふりして撃退したという話

昨日、人生初の「架空請求」なるものを経験したので、皆さんへの共有と教訓化も兼ねて、何があったのかをここに書き記す。
今回私にかかってきたのはこちら。

「NTTファイナンス」と名乗る者から「SLIM」なる架空のサイトの未納料29万9,600円を振り込め、さもなくば法的措置として弁護士を立てて東京地方裁での民事訴訟に来てもらうとのことだった。
当然私は今手元の資金は10万以下しか残しておらず、後はほとんど貯蓄にプールしているので「支払いは無理。そもそもそんなサイトに登録した覚えはない」というと「では法的措置を取りますね」という。
無論ここで切ってもいいのだが、久々に悪戯心が刺激されたのか魔が差したのか、騙されたふりして乗っかってどういう手段に及ぶかを見極めるために駆け引きをしてみた。
内容としてはこんな感じだった。

  • 民事訴訟に発展させないための措置として、国からの助成金で95%を賄える

  • 助成金には守秘義務があるため、知人・友人などに知られてはならない

  • 最寄りのコンビニのクレジットカードキャッシングで30万円を降ろし、アップルの決済カード10万円分を3枚レジに持って行って支払う

  • 何の決済かと聞かれたら「個人で使うので心配いりません」といえばいい

  • それでも無理な場合は郵便局で30万円分の小切手払いをしてもらわなければならない

ここから見ても分かるが、やり口が陰湿かつ卑劣であり、何とかしてでもNTTファイナンスの名を騙る彼らはどうにかして私に30万円を支払わせたいのである。
国からの助成金なんて真っ赤な嘘、登録した覚えがない架空サイトの請求ごときで国が金を出すなどということは天地がひっくり返ってもあり得ない。
また、助成金のことを知人・友人に知られてはならないというのも、それを相談した瞬間に詐欺だと露見してしてしまうことを危惧しての箝口令みたいなものだ。
そして、コンビニの決済や電子マネー、郵便局の小切手などの強硬手段に及んで来たら、十中八九架空請求なので絶対にこれに引っかかってはならない。

このように、奴らは巧みな情報操作と「それっぽい嘘」を織り交ぜながら巧妙にこちらを自分のペースに引きずり込み、支払わせようと仕向けてくる。
だが、他はいざ知らず私は昔からこの手の丁々発止は割とやって来た方なので、途中から声のトーンを切り替え、手口がわかったところで反駁に出た。
まず、「SLIMなんてサイトないんですけど、URL教えてもらえますか?」というと「いや、それはこちらでは把握しかねますね」と素っ頓狂なことをいう。
「え?知らないんですか?ならなぜ知らないサイトの件を請求して来たんですか?それに、NTTファイナンスとか言ってますけど、全く違う番号ですよねこれ」と問い詰めていく。

そうしてどんどん相手の言い分の弱点を容赦なく突いていき、最終的に話は民事訴訟にまで及び、「そもそも弁護士を騙ってお金を得ようとする時点で弁護士法第72条違反になるの知ってますか?」と聞いた。

弁護士法第72条

弁護士でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。

そう、正式な弁護士でないものが代理といえど民事訴訟をはじめとするあらゆる法的措置を講じることは不可能であり、東京地方裁判所での民事訴訟という手段を出した時点で犯罪なのである。
当然詐欺グループの担当者がそんな法律の知識などあるわけがなく、途中からは「うるせえ!拉致があかねえからお前の家に取り立ててやる!」と突然語気を荒げて私に詰め寄って来た。
「理屈で言い負かされたから今度は恫喝ですか?そこらのチンピラとやってることは大差ないですな」とあしらってやると、さらに支離滅裂な感情論を私に吹っかけてくる。
それでものらりくらりと交わしつつ「これ、証拠取ってますんで。音声通話も録音してますし、何ならこのデータを電話番号と一緒に警察に被害届出しましょうか?」というと、ようやく電話を切った。

およそ30分近くの攻防だったが、面白かったのは奴らの狙いはあくまで「お金を支払わせること」であり、そのためならありとあらゆる嘘をついて相手を騙そうとするのである。
しかし、ネットがない昔だったらいざ知らず、今はネットで少しでも検索すれば、架空請求の内容や手口なんてわかるし、法律に関する知識だってすぐ調べられるのだ。
ましてやこのSNS時代において「知りませんでした」では通用しない情報格差による二極化があるわけなので、なおさらこの手の詐欺が通用しにくい。
そこで外堀を埋めて、最初から「法的措置」というパワーワードを使ってこちらを脅してくるわけだが、法律を少しでも勉強すれば何も怖いことはない。

ちなみに、この電話の後でNTTファイナンスのお客様相談センターと警察にそれぞれ通報と相談を聞いたが、私に限らず似た手口の詐欺案件が最近特に増加傾向にあるそうだ。
それぞれに話を聞くと、やはりNTTファイナンスの方からいきなりそのような強硬手段でお金を騙し取るようなことはせず、未納料金がある場合は通知書が郵便で届くらしい。
また、弁護士を立てて民事訴訟に及ぶなんてこともないとのことであり、きちんと被害届も出して電話番号も通報しておいたので、今の所被害はゼロだが、確かに情報弱者や年配の方々は騙されてもおかしくないとは思った。
オレオレ詐欺に代表される「振り込め詐欺」がこのような感じで相手を巧妙に騙しているのかと思うとゾッとするし、そういう仕事をしても一切心痛まないサイコパスみたいな連中が架空業者で働いているのだろう。

今回のこれは詐欺の中でもまだ軽い方だとは思うが、教訓化しておくとまず知らない番号からかかって来た場合には一切その電話には出ないことである。
間違って受けてしまった場合は決して相手の言い分を聞く前に切ることであり、決して相手の言いなりになってはならない。
奴らは人々の良心につけこんで罪悪感を刺激し支払わせる方向に行かせようとするので、そこに騙されず冷静沈着に対応することだ。
間違っても大手業者が何の用もなく私たち市井の一般人に電話をかけてくることはないので、身に覚えがなければ放置しておけばいい。

また、似たような手口で投資やMLM・情報商材の案件が出回ることがあるが、世に出回っているそれらはほとんと搾取で儲けようとする詐欺案件ばかりだ
世の中そんなに甘くはない、うまい話には裏があるものであり、一次情報で紹介してもらったもの以外は全て偽物だと思って切り捨てることが大切である。
楽して金儲けるための絶対的な手段などありはしない、着実に積み重ねていったものしか最終的には自分の中には残らないことを心得ておこう。


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