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最近遊んだ・遊んでるゲームを一気にレビュー(2024年3月編)

三か月続いた!!えらい!!
ちなみにMTGアリーナは異形化デッキ使うのにハマってます!


有料インディーゲーム

プリコラージュ-IDOLIZED-

 消えたK-POPアイドル「セナ」をネットストーキングして何が起きたのかを探る探索アドベンチャーとなっています。「パルフォン」「マナーバトラー礼」「因習村祠破壊RTA」などで知られるHIJIKIさんの最新作です。
 今作は私が「2024年出る作品で一番楽しみにしている」と公言していた作品です。その期待を全く裏切らない驚きと怖さに溢れていて、短編ながらも大満足でした!
 ネット検索や写真で見つかるちょっとした映像から個人情報や探索のヒントを発見し、それをもとにセナやSNS上の他の人物のプライバシーや秘密を明かしていきます。最初はシンプルに画像を見てクリックするだけで情報が集まりますが、より深くまで知ろうとすれば細かいところにも注意を払い、情報から推理を組み立てることが求められます。その手間により「実際に人の秘密を探っている」という感覚を覚えますし、「ここを見ればあの辺の情報がわかるんじゃないか?そのためにはまずこれを探す必要があるな」と組み立てていくのが楽しくやり応えがあります。
 そうやってゲームのミッションをこなしながら楽しく遊んでいるうちに、自分の中に実は潜んでいた覗き趣味が喚起され、いわゆるGuilty Pleasure(後ろ暗い喜び)が自分の中にどんどん沸き上がってくることに気づかされます。steamの説明文に書かれている下着姿が実際にゲーム内で出た時「いやいやこんなのだめでしょ」と思いつつも、なんだかんだその姿に視線が静止していることを否定できないことを思い知らされたりしました。そうして倫理と情動の境目を強制的に往復させられて悦びと罪悪感を同時に刺激されるようなぞくぞくする感覚を味わえます。また、探索するにつれて浮かび上がってくる物語も本当にいいです。ある「逆転」が起きた瞬間は驚きとその展開の見事さに声が出ました。
 そして、今作はとにかくオープニング画面が好きなんです…。赤暗い部屋で、大量の自身のポラロイド写真を背にして口に人差し指を当てる姿に天使の羽が描かれ、そこに不安定だけど美しいBGMが重なる映像は今もたまに起動してしばらく見てしまうような、不気味ながらも恍惚としてしまう最高のオープニングです。ちなみにこの映像、物語の全貌を知った後に見ると違った意味を持つので、ぜひ遊んでそれを知ってほしいと思っています。


フリーゲーム


NOA

注意:気分の落ち込みが激しい方は内容にご注意ください。 

ノベルゲームコレクションのページより

 かねてよりファンを公言しているKaroooomeさんの最新作となります。

 非常に短く、分岐もない作品なのでストーリーについては一言もネタバレはできません。ただ、注意書きもある通りとにかく辛く、徹底的に容赦ない物語となっています。本当に強烈で、意地悪で、だからこそ誠実な物語でした。絵と言葉、そして私たちプレイヤーのクリックで語られるノベルゲームという構造を最大限に生かして、静かさと裏腹の雄弁さで私たちに語り掛けてくる、無垢な笑顔でナイフを突きつける作品です。きっと物語に触れた誰もが何かを持ち帰らざるを得ないでしょうし、私も含め少なくない人が思わず2周してしまうでしょう。
 誰を、どこを、どうやって、どう描き、どう始め、どう終わるのか。物語一つ一つのディテールに短いながらも工夫と愛、そして心意気を宿らせたKaroooomeさんのエクストリームな作家性と、だからこそ裏腹の優しさを感じる作品でした。


ブルースクリーンの恋人

 ブルースクリーンの画面でコンピューターに英単語の和訳を少しずつ教えるノベルゲームとなります。
 分岐なしと書かれている通りどんな訳を教えても内容が変わるということはありません。ただ、自分が教えた言葉によって間違いなくこの物語からプレイヤーが受けるものが大きく変わります。健気なまでに教えた言葉を使うコンピューターには自然と愛着が湧くでしょう。そして最後に現れるあの映像が非常に深く心に残ります。
 
青一色の中でテキストを読み、返事をする。それだけのシンプルな行為の繰り返しなのに、その繰り返しの中で間違いなく心を動かすものが作られていく、本当に素晴らしい作品です。健気さを生かしてあえてふざけるということも可能でしょう。非常に独特な感覚を覚える作品ですし、「個人制作のノベルゲームってこういうのに出会えるのがよさの一つだよね…!」って思えた作品でした。ぜひ遊んでほしいですし、これ本当に実況でやればよかったと後悔しているので誰か実況してください…。


十二股全部フる

 その名の通り十二股をかけている主人公が全ての彼氏をフるという、現在非常に話題となっている作品です。
 サムネイルからもわかる切れ味抜群のデザイン感覚や、彼氏をフりにいくロケーション、別れの会話、別れるために必要なイベントの意外さ、またフるのに失敗すると何が起きてしまうのかなど、一つ一つのシーンが強烈でポップで、でもどこか抑制的でさえあるのが非常に面白いです。この作者様の作品全体に通じるデザインの圧倒的な「よさ」、BGMのチルさなどが合わさり、起きていることは十二股というとんでもないことだったり、予想外のサプライズや恐ろしい展開に溢れているのにポップで、不思議な静けさやさっぱりした感触さえある魅力的な作品です。とはいえ決して薄い作品ということはなく非常に独特の世界と実は美しいストーリーを味わえるでしょう。
 また今作は作者様の過去作である「インタビュー・ウィズ・コンピュータ」「Egomixer」「ケートス号にまつわる記録」の3つを元にしたお祭り的な記念作品となっています。ただ、過去作との関わりはある設定を共有していることと、登場する男性キャラがスピンオフ的に出てくるというもので、これらの過去作を遊んでいないとわからないということはまったくありません。

 ただ、過去作三作とも非常に面白いですし短編なので可能なら先に過去作を遊んでからプレイするのをお薦めします!過去作を遊んでからだと「あ!こいつ出て来た!!」ときゃっきゃしながら遊べるでしょう。特に今回遊んだ「egomixer」本当によかった……!
 何より過去作も含めて遊ぶと、男性キャラの魅力、一度の周回では情報をすべて入手できないことから来る緊張感や想像力の喚起、ノベルゲームの周回という性質を利用してドラマを盛り上げる語り口など、作者様の一貫していて、そしてとても僕好みな作家性を感じてもらえると思います。

ネクストプレイヤー

 人間、ハエ、ネコという3種類の能力の違う主人公を切り替えてゴールに向かう超短編パズルアクションゲームとなっています。
 それぞれにできることが全く違い、それらを生かしてゴールに向かうのが適度に頭を使う感じで楽しめます。
 何より、今作はとにかく操作性がめちゃくちゃいいんですよね。人間の歩行、ハエの飛行、ネコのジャンプ、全てが心地よい操作感に溢れていて、動かしているだけでも楽しいです。延々空を飛んでいたくなりますし、遊んでいると不必要にピョンピョンジャンプしてしまいます。全11ステージですが、もっと難しいステージが遊びたくなってくるような作品です。

3人の勇者

 魔王に世界が支配されたという内容の絵本を、その絵本の中のアイテムなどを他のページに移動させることで魔王を倒す物語へ塗り替えていくという短編アドベンチャーゲームになります。
 仲間に他のページから武器を持ってきたり、ボスの前に仲間を連れていったりするとシーンやセリフが変わり物語が動くというアイデアとそれを実現される技術が秀逸で、見ているだけで楽しくなっていきます。ページが変わるとどんどん変化するセリフ回しにもセンスとユーモアがあり、短いですが本当に傑作なのでぜひ遊んでほしいです。これ本当にやらないとわからない最高の感覚がある作品なので…!


おまけ

「プリコラージュ -IDOLIZED-」と「NOA」、「十二股全部フる」を実況しているので紹介します!


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