見出し画像

ショートエッセイ:泳いで、浮かんで、たゆたって -新人Vtuber時代の「同期」を思う-


2年も経てばサムネも積もる


 Vtuber2周年を迎えるにあたりyoutube活動を改めて振り返っていました。
 
配信サムネイルのリストがアルバムのようで、思い出が1280×720のpngファイルから立ち現れてきます。この2年間を楽しく振り返れるありがたさと共に拙くも楽し気な当時の私に思いをはせていきます。

youtube初配信がこれです。恥ずかしい…!

 今だとやらなさそうな企画やゲーム実況のサムネに「そういえばこんなことしたな!」となったり、無駄に凝って逆に視認性下げている文字のグラデーションが恥ずかしくなったり。
 昔の配信も少しだけ見てみると今と比べると本当に緊張していて、30分前には準備を終わらせていたのにそれでも配信の直前には結局バタバタしていたなぁとか、年甲斐もない初々しさを出す日向日影に、それもいい思い出だなと感じながら見進めていくのです。
 そうやって初配信に近づくにつれ、自分の心が私自身と同じかそれ以上に一緒にコラボしたりtwitterでやりとりしていた他のVtuberたち寄っていくことに気づきました。

「私も色々変わったけど、みんなも変わったなぁ」
「そういえばここでこの人と最初に会ったんだっけな」
「今、元気かな」

 見ていたものが旅行のフォトアルバムから学校の卒業アルバムに変わったかのような感覚。ちょっとの切なさに口を閉じて、唇をほんの少しだけ噛んでいる自分に気づきます。

同期の桜じゃないけどさ


 コラボなりSNSなりDiscordサーバーなり、ありがたいことに様々なVtuberの方々と関わりを持つ機会に恵まれています。配信外で遊ぶ機会は両手で数えるほどもないのでほとんどは活動内での関係性ですが、本当に魅力的で楽しい方々と時間や刺激を分け合えるのは私の活動にも私自身の心身にもとても大切なことです。
 そんな素敵な方々の中でも、やはりデビューしてすぐの頃にコラボした人たちには思い入れがあります。配信ソフトの使い方を聞きあったり、コラボするゲームの基本操作もふわふわした状態で、恥ずかしさと馴染まなさを抱えたまま「新人Vtuber」を名乗りコラボしていた、あの頃の仲間たち。
 何かのグループとか箱ではないけれど、個人的には「同期」だと思っています。

当たり前ですが、「同期」のみんなも色々変わっていっています。

堅実にしっかりと継続している人

少しずつ色んなことを試している人

数字的に大成功して収益化とかメンバーシップとかやってる人

当時とは違う方向に行った人(僕はみんなからはこれに見えるかな)

色々苦しみながら、それでも活動を続けている人

名前が変わった人

プライベートの変化で活動頻度が落ちた人

もう辞めてしまった人

気づいたらいなくなっていた人

誰だって変わるのは当然で、それぞれの道を歩んでいます。ただ、その頃のみんなを思い浮かべると、笑顔を浮かべつつも、アンニュイな気持ちにまた唇を浅く嚙んでいる自分に気づきます。

ダンスホールにダイブして


 Vtuberの世界は巨大なダンスホールみたいだと言ったことがあります。

 でも、今Vtuberの世界、その中での私やみんなの現在地を考えたとき、ダンスホールであると同時に海みたいでもあるな、って思うことがあります。広い海原の上に立って、ふと周りを見回している自分が思い浮かぶのです。

こんな感じです

 海は無限と感じるほどに大きく、そこで泳いだり、波に流されたり、ゆらゆらとたゆたって、ふと見上げればあの頃とは違う場所にいる私、そして思った以上に遠くにいるみんな

 あの頃、このVtuber界という水面 みなもでなんとなく近い場所に生れ落ちて、寄り添い合うとまではいかないけど、互いの新しい世界への期待と不安と熱気を感じ合えるぐらいの距離にいた同期たち。

 当たり前ですが、私が「同期」と思うみんなとの今の距離感や関係性は様々です。

 あの頃と相変わらず同じようにコラボしたり配信で交流する相手ももちろんいます。あの頃あんなに一緒に活動していたのにかなり疎遠になった方、逆に新人の頃はそこまで関わりがなかったけど最近になって随分絡む機会に恵まれているVtuberさん。メンバーシップ開始の通知で近況を知った人、離れていても伝わるぐらい大きな規模で眩く活躍している人。一、二度挨拶をした程度でそれ以来何もない人。違うところで元気に過ごしていることを願うことしかできない方。もしかしてまた新しい名前で新人Vtuberになっている人もいるのでしょうか。

 出会いと、別れと、その中間。
 その間に広がる海。

 そんな光景を思い浮かべると寂しくもなります。

 でも、これは、きっと、いいことなのでしょう。このVtuberという場所はなんだかんだ優しくて、みんなが自分のやりたいことをやっていい場所。みんなが進みたい方向に泳いで行ったり、Vtuberとはまた違う別の場所で何かを目指しているなら、それは歓迎するべきことなのでしょう。

クラリネットは壊れてない


 たまに自分が同期だと思っているVtuberさんの配信や動画に行ってコメントしたりしなかったりしています。おこがましい言い方ですけど、やっぱりみんなあの頃とは変わってるし、みんな成長しているんですよね。喋り方や配信画面の作り、機材の種類や使い方など、配信に明らかに慣れていますし、活動の経験で積み重ねてきたものが一秒一秒に現れていて、「ああ、ここでずっと頑張ってるんだな、自分も頑張らないとな」って思わされます

 私はよく、「Vtuber活動は2回目か3回目の青春」と言っています。

 その比喩の通り青春に例えるなら、まるで高校1年生の時の同級生のような存在です。授業の合間に教室で喋ったり、学校帰りにファミレスに寄ったりしてた、そんな同級生。2年生からコースが別になったり部活が忙しくなったりして、メールやLINEも減って疎遠になっていく感じ。素直に言うと私の高校時代にはLINEはなかったですがそんなイメージが湧きます。
 ふと、その元同級生が図書室で期末試験や模試に向けて自習をしている姿を見たり、遠くから聴こえる吹奏楽部のクラリネットの音から一所懸命に演奏する姿が思い浮かんで、「あいつも頑張ってるんだな」と自然と背筋が伸びる。
 
そんなシーンが浮かぶような、そんな「同期」の姿に自分もすっと背筋を伸ばし配信をBGMに作業を頑張ったりしています。

あの頃と同じように、だから全部違うように


 もちろんあれから新しく関係を結んだVtuberさんもいっぱいいます。
 何より私の活動を見てくださる視聴者さがいらっしゃいますし、少しずつ増えている実感もあります。疎遠になった方がいたとしても決して私は寂しくはなく、むしろ恵まれている環境で活動できている方です。
 だから今の変化が嫌ということはないですし、むしろ、こんな思い入れを抱ける人々と出会えたのはVtuberになってよかった理由の一つでしょう。
 でも、一回ぐらい右も左もわからない時期を過ごした「同期」たちと、あの頃のようにまたやってみたい、なんてことを思うこともあります。
 当時よくコラボしていたパーティーゲーム系のコラボがいいでしょうか?30分前に集まって、あの頃と同じように配信前から盛り上がって、一人ぐらいトラブルがあって、でもあの頃よりも締めるとこは自然に締まるんでしょう。あの頃より挨拶が小慣れていて、トークも噛み合いだしたらどんどん盛り上がっていくでしょうね。きっとみんな配信の見せ方もしみついているから当時よりも視聴者さんも楽しんでくれて、僕らもすごく楽しむでしょう。配信後の雑談も結構だらだら喋っちゃったりして。それで「またよろしくね」なんて言って解散して。


そして、終わった後、ちょっと寂しくなるんでしょうね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?