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マナー&プロトコール

 2024年4月15日、NPO法人日本マナー・プロトコール協会理事長の明石伸子さんにマナー講座を行っていただいた。

【講師紹介】

明石伸子
特定非営利活動法人日本マナー・プロトコール協会 理事長
NHK経営委員
一般社団法人 日本ホテル・レストランサービス技能協会 理事
学習院女子大学 非常勤講師
 
 客室乗務員をしていたが、転職をして秘書としても働いた。その経歴からマナーに詳しいのだろうと思われて、教えを請われることが多かった。しかし実際は、お客様対応には慣れていたが、社会のマナーやしきたりはあまり分からなかった。マナー本も多数出ているが著者によって言っていることが違うなと思い、協会をつくろうという思いに至った。社会のためにもなるし、新しいことをするのが好きということで、2003年に当NPO法人を設立した。2022年までは文部科学省後援の「マナー・プロトコール検定」を行ってきたが、2023年の20周年を機に、「コミュニケーションマナー検定」も開発した。

マナーとは

「マナー」「礼儀」・・・人との関係を良くするための心得や心
「エチケット」「作法」・・・しきたりやルール
 リスペクトや思いやりの気持ちがあっても、それをうまく表現できないと相手には伝わらない。逆もしかりで、形だけやっても思いがないと慇懃無礼(いんぎんぶれい)になってしまう。マナーや礼儀という「心」とともにエチケットや作法があって、初めて自分の相手への想いが伝わる。

 マナーの根底を作っているのは人の価値観であるため、年代、時代によって、さらに言えば人によっても変わる。時間・場所・場面・立場・人柄などの条件に合わせて柔軟に対応できるように、自分の価値観より厳しいルールを知っておくことが大切。特に「自分たちより上の年代にとってのマナー」を知っておくことで、年長者ともよい関係を築きやすくなる。

社会人としての心持

 昔から「専門性」「人間性」「戦略性」が必要だと言われてきたが、近年AIの進歩により人間性が特に重要視されるようになり、一方で専門性はあまり求められないようになってきた。どんどん移り変わっていく社会にいかに対応するかという点においては、戦略性は引き続き求められる人的スキルだ。

 顧客満足度(CS=Customer Satisfaction)は常に意識する必要がある。不満に繋がるのは期待値を実際の結果や評価が下回ってしまった場合。期待値は人によって異なるし、その都度変わる。KPI(重要業績評価指標)の設定とその目標を達成するために、コスト、時間、労力など効率を上げた上で、関係者全員(ステークホルダー)に対して誠実な対応をする(ガバナンス)ことも大切だ。 

好感度を高めるには

 人の印象には第一印象が重要。一度悪い印象を与えてしまうと、その印象はなかなか変えることができない。

(出典:マナー&プロトコールの基礎知識, NPO法人日本マナー・プロトコール協会)

 アメリカの心理学者であるアルバート・メラビアンによると、第一印象は約10秒で決まり、判断する情報のほとんどは視覚や聴覚から来ている。内容は忘れてしまっても、五感で感じた雰囲気やイメージは情報として残りやすい。 

良いイメージを残すために

〇姿勢

 姿勢は持っている面積の印象により異なる。広くする(足を広げる腕を腰に当てるなど)と威厳や偉そうな雰囲気になり、反対に狭くする(猫背など)と自信なさげに見える。

〇態度

 所作一つ一つの後の「残心」を大切にする。感謝や謝罪、挨拶なども言いながらする同時礼ではなく、言葉を先に言った後に礼をする分離礼(語先後礼)がより丁寧に見える。

〇笑顔

 歯を見せるだけでも笑顔に見える。頬や口角をあげる練習をし、自然な笑顔ができるようにする。鏡は意識的にみて、自分が他人にどのようにみられているかを確認すると良い。

〇挨拶

 立っている時の礼は、頭を垂れるのではなく、頭を差し出すようにする。日本では立礼より座礼の方が正式で、目下の者が目上の者に対して行う。相手のことは目で凝視するのではなく感じる(察する)。
 
 一方、西洋では握手で挨拶を行うが、目上の者(位、ポジション、女性、高齢者)が目下に手を差し出す。名前を名乗って相手の目を見ながらにこやかに、力強く握る。ある程度の距離をとることも必要。

〇服装

 服装は“プロ”らしさ(何の業界の人かを表す)が大切。身だしなみは、相手に不快に感じさせないことを意識する。

〇言葉遣い

敬語の指針―尊敬語       
     ―謙譲語 相手と関わる動作で自分がへりくだり、相手を立てる
          例:お迎えする       
     ―丁重語 相手に関係なく自分がへりくだる 例:申す          
     ―丁寧語       
     ―美化語 名詞の前に「お」をつける 例:お水、お弁当

 場面によって敬語は使い分けなければならない。言葉も時代によって変わっていくため、こだわりすぎず、「みんな」が理解できる言葉選びと使い方で話すことが大事。「方言」は親しみやすさを出したり、地元のアイデンティティーでもあるため、伝われば使っても問題ない。(標準語は、共通の言語として後から作られたもの)

*二重敬語、ら抜き言葉、さ入れ言葉に注意
*「させていただく」は相手の承諾を得てする場合やそれをすることで自分が恩恵を受ける場合に使う 
 例:拝見させていただく ×案内させていただく 

感想

 話し方・話の聞き方、国旗の掲揚、食事のマナー、席次、お茶の出し方、手紙やメールの書き方など、多様なマナーを約6時間で教えていただいた。明石先生の、常に姿勢よく、言葉遣いの丁寧さも崩さない、それでも笑顔を絶やさない姿に格好いいなと思った。マナーを堅苦しいものと捉えず、相手の方に自分との時間を快く過ごしてもらうためにするものと捉え直すための良い機会だった。それによって良い印象を持ってもらえるし、その後の関係性構築にも繋がる。改めてマナーは人として大切な要素なのだと学んだ。


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